愛猫は、1年前に保護した「まる」だけ――。そう思っていた中澤さんはある日、お店の庭で愛猫とそっくりな黒猫ゆきちゃんに出会い、心境に変化が…。
過酷な暮らしを送るゆきちゃんのお迎えを検討するようになりました。
自店の周辺で出会った黒猫を保護
中澤さんは長野・長野市でサンドウィッチ屋「薪窯焼パンのサンドTIKU-(チクー)」を営んでいます。
中澤さんが作るサンドウィッチ
2023年の夏、お店の周辺に黒猫が現れ、声をかけるように。その子こそ、後に家族となったまるちゃんです。
保護時、まるちゃんは生後6ヶ月ほど。中澤さんは猫と暮らしたい気持ちはあったものの、仕事も忙しく、今の日常では難しいと思っていました。
しかし、まるちゃんと関わる中で「一緒に暮らしたい」という気持ちが募るように。
まるのほうもご飯をあげていないのに甘えてくるようになったので、保護を決意しました。
当時、住んでいた物件はペット不可。そこで、お店の使用していない一室にケージを置き、まるちゃんに過ごしてもらいつつ、新居探しや引っ越しの準備に奮闘しました。
猫と暮らすのは初めてだったので、分からないことばかりで…。まるには辛い思いをさせてしまったかもしれません。
保護後には妊娠が発覚し、堕胎手術。子猫の命を救えなかったことに中澤さんは苦しみましたが、まるちゃんが変わらず甘えてくれ、救われたそう。
保護から1ヶ月後、引っ越しを済ませた中澤さんはまるちゃんをお店から新居へ連れていき、本格的に猫ライフをスタートさせました。
愛猫にそっくりな野良猫が気になって…
思い出深い保護から1年経った2024年7月、いつもと違う通勤ルートを歩いていた中澤さんはまるちゃんによく似た黒猫に出会いました。
その猫はガリガリで、虫や土、草などを食べているような素振りを見せたそう。胸が苦しくなりましたが、自分たちにとっての愛猫はまるちゃんだけだと考えていたため、「ごめんね。頑張って生きてね」と話しかけ、立ち去りました。
しかし2ヶ月後、その黒猫がお店の庭に出現。変わらずガリガリで、顔の毛が抜けていました。
その姿が保護時のまると重なって感情が溢れ、「この子を保護する」という気持ちになったんです。厳しい猛暑をひとりで乗り越え、生きていてくれたんだと泣けてきました。
しかし、保護する覚悟でご飯をあげても猫ちゃんは警戒して、食べず。少し近づくだけでも逃げ、いつも離れたところから中澤さんの様子を伺っていました。
この子の保護は難しいのでは…。距離が縮まらない日々の中では、そんな想いがこみ上げることもありましたが毎朝、出勤するのを待っていてくれる姿を見ると、「保護する」という意志を貫くことができたそう。
トイレは、うちの敷地内でしてくれていました。毎日、何とか無事でいてほしい、朝になったらまた会えますようにと願っていました。
猫ちゃんの態度に変化が現れたのは、2週間後のこと。中澤さんの近くでご飯を食べてくれるようになったのです。
ただ、少しでも手を動かすと逃げてしまうため、中澤さんは背を向けて過ごす、たくさん話しかける、ご飯を食べている近くで寝そべるなど、何とか慣れてもらえるように奮闘しました。
ちゅ~るだけはより近くで食べてくれたので指先に乗せて、なるべく離れて手を伸ばしたら、指から食べてくれました。お皿に入れたちゅ~るを食べている時、少しだけ頭を触れて嬉しかったです。
互いの存在が安心感につながる関係性を築いてほしい
扉を開けたケージでご飯を食べてもらうなど、試行錯誤するもなかなか保護できずにいた中澤さん。
しかし、ある日チャンスが。猫ちゃんはケージの2階部分で大好きな「ちゅ~る」を夢中でペロペロ。その姿を見た中澤さんは静かに近づき、ケージの扉を閉めました。
猫ちゃんは威嚇こそしなかったものの、大暴れ。ケージに布を被せて優しく声をかけると落ち着いてはくれましたが、ケージが揺れるほど体を揺らして怖がったため、中澤さんは胸が苦しくなりました。
保護後、動物病院に行くと1歳半~2歳くらいの男の子であることが判明。中澤さんは「ゆき」という名前をプレゼントしました。
まると年齢が同じくらいで胸と股の白毛がそっくり。きょうだいかなと思ってもいます。
お迎え当初、ゆきちゃんは警戒してケージから出なかったものの、新しい環境に慣れるにつれ、少しずつケージの外へ出られるように。
今もほとんど触れませんが、それでも構いません。たまにおでこを触ると目を閉じて撫でさせてくれて、かわいい。慣れたら甘えん坊になるかも。
そう話す中澤さんは、低音で猫らしくないゆきちゃん鳴き声も愛おしく感じています。
まるが少食なのもありますが、ゆきは大食い。猫って、こんなに食べるんだ…と思いました(笑)
なお、ゆきちゃんはお迎えから1週間後にまるちゃんと初対面。威嚇をされ、しょんぼりしていたそうです。
でも、ガラス扉越しだと、お互いを見合ったり近くに寄ったりします。距離も毎日、少しずつ縮まっているように感じます。
2匹を保護でき、一緒に暮らしていけるのは幸せなこと。そう感じている中澤さんはお互いの存在が安心感につながる関係を2匹に築いてほしいと願っています。
一緒に寝たり遊んだりしてもらえたらなお嬉しいですが、距離があってもお互いにストレスなく安心して暮らしてもらえたら幸せです。
人家族も猫家族も手に入れたゆきちゃん。ゆっくり新しい幸せに慣れていってね。