【インターペット大阪2024】「猫が30歳まで生きる日」猫の腎臓病AIM研究最新レポート<後編>

2024年9月21日、大阪で開催された「インターペット大阪2024」のセミナーで一般社団法人「AIM医学研究所」の代表理事所長である宮崎徹先生が、最新のAIM研究成果を発表してくださいました。

「AIM研究」は、猫の「慢性腎臓病」の特効薬となる研究です。猫の3匹に1匹が腎臓病になるといわれていますが、完全に治す方法はありませんでした。しかし、最新のAIM研究の成果をもってすれば、猫の腎臓病を治療できるかもしれないのです。

このセミナーレポートでは、難しい医学用語はできるだけ避けて、宮崎先生の最新の研究内容をご紹介します!

猫の腎臓病のメカニズム を「山火事」で例える

宮崎先生は、猫の腎臓病を「山火事」に例えてお話ししてくださいました。想像してみてください。美しい緑に覆われた山があります。この山が猫ちゃんの腎臓だと考えてみましょう。

– 健康な腎臓 = 緑豊かな山
– 腎臓病 = 少しずつ広がる山火事

腎臓病は、この山にぽつぽつと火がつき始め、それがゆっくりと広がっていくようなもの。最初は小さな火種から始まり、気づかないうちに広がっていきます。

でも、なぜ猫ちゃんはこの「山火事」(腎臓病)になりやすいのでしょうか?

それは「AIM」というタンパク質の問題です。AIMは、体内のゴミ(老廃物)を掃除する役割があります。猫はこのAIMを体内にもっているのです。ちなみに、人間の体にもAIMはあり、これがきちんと働いているので腎臓病になりにくいと言われています。

ところが、猫のAIMは、体内にあるのに、なぜか上手く働かないのです。そのため体内のゴミがどんどん溜まっていって、それが「火種」になって腎臓を傷つけてしまいます。

この「山火事」は、一度始まるとどんどん広がっていきます。そして、最終的には山全体(腎臓)が焼け野原になってしまう。これが、猫の腎臓病の進行です。多くの猫が腎臓病にかかるのはこういった理由があるのです。

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AIMの働きと新たな発見

AIMとは何なのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

AIMとは?

AIMは、私たちの体の中にある特別なタンパク質です。

宮崎先生たちが発見した、AIMの二つの重要な働き:

1. ゴミ掃除の名人
– AIMは体の中にたまった老廃物(ゴミ)を掃除します。
– これが「山火事」(腎臓病)の火種を取り除く役割をするのです。

2. 細胞を元気にする応援団
– 驚くべきことに、AIMには傷ついた細胞を元気にする力もあります!
– 「山火事」で弱った木々(腎臓の細胞)を回復させる力があるということです。

猫の問題点:
猫の体にもAIMはあるのですが、残念ながらうまく働いていません。そのため、ゴミがたまりやすく、細胞も回復しにくいのです。

新たな発見:
宮崎先生たちは、このAIMをうまく働かせる方法を見つけたのです!外から猫ちゃんの体にAIMを届けてあげれば、掃除も細胞の回復も手伝ってくれるんです。

例えるなら、山火事を消す消防士さんと、焼けた山を再生させる植林チームを同時に派遣するようなものです。すごいですよね!

希望の新薬は、もうすぐそこに!

宮崎先生たちの研究チームは、AIMを使った新しい薬の開発を進めています。その進捗についてもお話しくださいました。

臨床試験の段階:
– 現在、薬の効果と安全性を確認する「臨床試験」の直前段階まで来ています。
– 来年(2025年)の春には、実際に病気の猫で新薬を試す「臨床試験」が始まる予定です。

承認までのロードマップ:
1. 臨床試験の実施(2025年春~)
2. 結果の分析
3. 農林水産省への承認申請
4. 審査と承認

嬉しいニュース:
– 通常、新薬の承認には長い時間がかかりますが、農林水産省も応援してくれているそうです。
– もし全てがうまくいけば、2027年には皆さんの手元に届く可能性が!

期待される効果:
宮崎先生が示してくださったデータによると、この新薬には素晴らしい効果が期待できそうです。

腎臓病の進行を大幅に遅らせる可能性
重症の猫でも、症状が改善する可能性
– 健康な状態を長く保てる可能性

この薬は、宮崎先生たちの研究チームと、たくさんの猫好きの方々の応援・支援によって開発が進んでいます。まさに、飼い主さんの願いが形になった薬と言えるでしょう。

注射で腎臓病を撃退!

宮崎先生が開発中の新薬での新しい治療法。その特徴を見ていきましょう。

注射による治療法:
– 新薬はAIMを含む注射薬です。
体の外からAIMを補充することで、猫の体内でAIMをうまく働かせます。

治療のイメージ:
1. 消防士さん(AIM)を注射で体内に送り込む
2. 消防士さんが腎臓の「山火事」を消火
3. 同時に、傷ついた細胞を修復

適切な治療開始のタイミング:

– 腎臓の機能が約8割程度まで低下したとき

ただし、かなり進行した状態でも効果が期待できるそうです。血液検査の結果を見て、獣医さんと相談しながら決めるのがよいでしょう。

予防的アプローチの可能性:
– 将来的には、腎臓病の予防にも使える可能性があります。
– 定期的な検査で早期発見し、初期段階で治療を始めることで、重症化を防ぐことができるかもしれません。

治療の頻度:
– 初期段階では数回の注射で効果が現れる可能性があります。
– その後は、状態を見ながら年に数回程度の注射で維持できるとの予想です。

この新しい治療法は、猫の腎臓病治療を大きく変える可能性を秘めています。今までは進行を遅らせることしかできなかった病気が、劇的に改善する可能性が出てきたのです。

療法食との組み合わせ

多くの飼い主さんが、腎臓病の猫ちゃんに療法食を与えていると思います。宮崎先生は新薬と同時に、AIMを助ける成分を含む療法食の開発にも取り組んでいます。

新しい療法食の開発:
– 現在発売されている腎臓健康維持フード「AIM30」で知られるマルカン社と協力して、新しい療法食を開発中です。
– この新しい療法食は、AIMの働きを助ける成分を含んでいます。

既存の療法食との違いと利点:
1. AIMサポート機能:
– 新しい療法食には、猫の体内のAIMを活性化する成分が含まれています。
– これにより、体内のゴミ掃除と細胞修復を助ける効果が期待できます。

2. 従来の療法食の利点も維持:
– タンパク質や塩分の調整など、既存の療法食の良い点も取り入れています。

3. 相乗効果:
新薬(AIM注射)と新しい療法食を組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。

使い方のイメージ:
– 軽度〜中程度の腎臓病:新しい療法食だけで様子を見る
– 進行した腎臓病:新しい療法食+AIM注射で治療

発売時期:
– 宮崎先生によると、この新しい療法食は今年(2024年)中には発売される可能性があるそう。

飼い主さんにとってのメリット:
1. 治療の選択肢が増える
2. 食事だけでもAIMをサポートできる可能性
3. 注射と食事療法を無理なく組み合わせられる

この新しい療法食の登場により、猫ちゃんの腎臓病治療はより効果的になりそうです。食事からサポートし、必要に応じて注射治療を行う…、そんな柔軟な治療法が現実になりつつあります。

Q&A…気になる疑問にお答えします!

セミナーの最後には、参加者から多くの質問が寄せられました。

Q1: 新薬の注射は、どのタイミングから始めるのが良いですか?

A1: 宮崎先生:早期発見・早期治療が理想的です。ただし、かなり進行した状態でも効果が期待できます。現在、血液検査のどの値を見れば最適なタイミングがわかるか研究中です。将来的には、「こういう状態になったら遅くとも治療を始めてください」というガイドラインを示せると思います。

Q2: 予防的に使うことはできますか?

A2: 宮崎先生:現段階では、ある程度腎臓病が進行してから使う想定です。しかし、将来的には予防的な使用も検討しています。ただし、そのためには長期的な安全性の確認が必要です。

Q3: 犬にも効果はありますか?

A3: 宮崎先生:腎臓病のメカニズムは犬も猫も似ていますが、AIMの働きに違いがあります。猫用のAIMを犬に使うと、体が異物として認識して効果が薄れる可能性があります。将来的には犬専用のAIMを開発することも考えています

Q4: 治療は一生続ける必要がありますか?

A4: 宮崎先生:初期段階では数回の注射で効果が現れる可能性があります。その後は、状態を見ながら年に数回程度の注射で維持できると考えています。完全に治すというよりは、進行を止めて良い状態を保つイメージです。

Q5: 現在の療法食と新薬はどう併用すればいいですか?

A5: 宮崎先生:新しく開発中の療法食は、AIMの働きをサポートする成分を含んでいます。この新しい療法食と新薬を組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。既存の療法食との併用方法については、新薬の承認後に詳しいガイドラインを示す予定です。

猫たちの未来を明るく照らす希望の光

宮崎先生のセミナーを通じて、猫の腎臓病治療に大きな希望が見えてきました。先生の研究の意義と今後の展望をまとめてみましょう。

研究の意義:
1. 根本的な治療法の可能性:
– これまでの対症療法ではなく、腎臓病の原因に直接アプローチする新しい治療法です。
– AIMの働きを活用することで、腎臓の機能を実際に改善できる可能性があります。

2. 猫のQOL(生活の質)向上:
– 腎臓病の進行を遅らせるだけでなく、症状を改善できる可能性があります。
– これにより、猫たちがより長く健康に過ごせるようになるかもしれません。

3. 予防医療への道筋:
– 将来的には、腎臓病の予防にも使える可能性があります。
– 早期発見・早期治療により、重症化を防ぐことができるかもしれません。

今後の展望:
1. 臨床試験の実施(2025年春〜)
2. 新薬の承認と販売(早ければ2027年)
3. 新しいAIMサポート療法食の発売(2024年中の可能性)
4. 治療ガイドラインの確立
5. 犬や他の動物への応用研究

宮崎先生は、この研究は多くの猫好きの方々の支援と応援によって進められてきたことを、繰り返しお話しされました。この新薬は、まさに私たち飼い主の願いが形になったものと言えるでしょう。

2025年のインターペット大阪で続報が聞けるかも…

宮崎先生は「来年はここでまたいい報告ができるかもしれません」と力強くお話しされました。来年のインターペット大阪2025は、2025年6月13日(金)〜6月15日(日)にインテックス大阪1・2・3号館で開催されることが決定しています。

猫たちの未来が、確実に明るくなろうとしています。猫が腎臓病を克服し、30歳まで生きる日も遠くないのかもしれません。大切な家族である猫たち。その健康と幸せのために、これからもこの研究の進展を見守り、応援していきたいですね!

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二階堂 ねこ
野良猫を保護してうちの子にしたライター・二階堂ねこのブログです。愛猫は独立独歩の性格を尊重して「独歩(どっぽ)」と名付けました。最先端猫ガジェットをお試しするなど、おどろきの家猫ライフを綴ります。