誰の人生にも、暗い陰の谷を歩く瞬間が訪れます。ジェシカさんは、まさにその渦中にいました。婚約者と別れ、同棲を解消して引っ越しをすることになったのです。
心に大きな穴が開いたジェシカさんのもとに、ある依頼が舞い込みました。「けがをした猫を一時的に保護してほしい」。そして新居にやってきたのが、やつれ果てた猫・ブーマーくんだったのです。
ブーマーくんは首に大きな怪我をしており、また左の目を失明していました。
そしてブーマーくんもまた、心に大きな傷を負っていたのです。いつでもジェシカさんに飛びつき、抱っこされていないと安心できません。床に置かれるとまるでパニックのような症状を起こすのです。
ジェシカさんはブーマーくんの荒れた毛並みや痩せ細った体から、老猫だと思っていました。獣医師の診察でまだ3歳にもなっていないと分かった時、非常に驚くと同時に、甘えたがる理由にも少し納得したそう。
ブーマーくんのお気に入りはピザの箱の上。愛情深いジェシカさんによって、猫専用ベッドやヒーター付きのマットが用意されているのに、なぜかブーマーくんはピザの箱の上で眠ります。
寂しがりでいつもジェシカさんにくっついていないと安心できないブーマーくん。ジェシカさんが優しい愛情を注ぐうち、少し子猫らしい活発さも出てきました。落ちているペンで遊び始めた時、ジェシカさんは大喜びし、すぐに猫用のかわいいおもちゃを買ってきました。
片時も離れない猫を一生懸命お世話するうち、ジェシカさんも少しずつ立ち直ることができました。いつも抱っこされたいブーマーくんのぬくもりが、ジェシカさんの心の痛みを癒したのです。ジェシカさんはブーマーくんを引き取ることにしました。
「本当につらい時期にブーマーは一緒にいてくれた。この話をすると泣いちゃうわ」とインタビューに答えるジェシカさん。しかし表情は少し明るくなったように見えます。家にはジェシカさんの愛情を必要とする大切な相棒がいるーー、お互いに必要とし合い、与え、与えられる関係の1人と1匹。これからも静かに深い絆を紡いでいくことでしょう。