運命の24時間。1匹目が呼んだ、2匹目の命
物語は、雨が降る10月3日の夜から始まります。飼い主さんは八百屋さんの横で、雨に濡れて震えている黒い子猫を発見しました。

「こんな雨の中……、放っておけない」。飼い主さんはひとまず子猫を家に連れ帰り、段ボールで保温してミルクをあげました。「とりあえず、朝になったら病院へ連れて行こう」。

翌朝、自転車のカゴに黒猫を入れた段ボールを乗せ、病院へと急いでいました。段ボールの中から聞こえる「ミィミィ」という鳴き声。しかし、道中で飼い主さんは気づきます。「……あれ? 別の場所からもミィミィ聞こえない?」。

中央分離帯に潜んでいた「2匹目」
あまりに切迫した鳴き声に自転車を止めると、近くを掃除していた清掃員さんが「あの中央分離帯からなのよ」と教えてくれました。車が行き交う道路の真ん中、生い茂る植木の中にライトを向けると……そこには泥だらけの小さなキジトラの子猫が。「1匹も2匹も変わらん!」。即座に決意した飼い主さんは、手を伸ばして救出。先に見つけた黒猫が入った段ボールに、そのままキジトラを合流させました。1匹目を助けなければ、決して見つからなかったはずの2匹目の命。まさに、黒猫が呼んだ奇跡の出会いでした。

病院での仮名は「猫ちゃん」
2匹を連れて駆け込んだ病院。泥だらけのキジトラから汚れをもらって、せっかく洗った黒猫もまた汚くなってしまいました。段ボールの中で2匹はぎゅっと抱き合い、お互いの体温で励まし合ってたようです。まだ名前が決まっておらず、受付のモニターには「(苗字)猫ちゃん」と表示されました。

「苗字と名前が組み合わさる仕組みのところで、『猫』ってなんだかおもしろくて(笑)」と振り返る飼い主さん。先生は「あと数日遅ければ死んでいた。拾ってよかった」。2匹まとめて1匹分の料金で診察してくれました。
「名前をつけたら、家族になってしまう」
飼い主さんの心には、以前亡くした愛犬の面影が浮かんでいました。愛犬を亡くした後ペットロスで深く傷ついた飼い主さん。「もう二度と生き物は飼わない」と心に決めていたのです。そのため、あえて情を移さないようにと、2匹のことはずっと「黒」「茶色」と色で呼んでいました。「君たちは、ひとまず……、居候ということで」。とりあえず、買ってきたトイレの箱でちょっと立派な段ボールハウスを作ってあげました。

しかし、懸命に生きる子猫たちのお世話をするうちに、心の堤防は少しずつ崩れていきます。「秋だからオータムとフォールがいいかな?」「アイドルみたいな名前にしようかな?」。無意識に名前を考えてしまっている自分。ついに2匹を家族として迎えることに決めたのです。

10月3日に拾ったから、トミ。

10月4日に拾ったから、トヨ。

こうして「トヨとトミ」という、武将のように立派で素敵な名前が贈られたのです。
兄弟よりも、兄弟
現在は、トミが新しいことを覚えるとトヨも真似をし、2匹で切磋琢磨してイタズラの質を上げている真っ最中。拾われた時は命の瀬戸際にいた2匹ですが、飼い主さんのおかげで平和に育ちすぎたのか、猫パンチを知らないまま大きくなったそう。段ボールハウスも、今では二階建てのちゃんとした戸建てケージにランクアップです!

出会った場所も日も違う2匹は、最初から毎日抱き合って眠るほどの大の仲良し。「子猫の頃から使っている猫用ソファに2匹で寝ているんですが、最近は体が大きくなりすぎて収まりきっていません。きっと本猫たちは兄弟だと思っているのではないでしょうか」。偶然が重なって結ばれた、トヨくんとトミくん、そして飼い主さんとの絆。雨の日の出会いは、心温まる物語へと続いていました。

飼い主さんは、「トヨとトミ」のInstagramアカウントで、2匹の日常を紹介してくれています。





