岩手・盛岡市にある「バッファロー」は、創業52年の歴史を持つ手作りピザのお店。来店客の間で人気なのは生地から手作りした種類豊富な絶品ピザと看板猫いとちゃんです。
いとちゃんはなんと、自らお店に入ってきた保護猫。運命的なものを感じた店主さんは“赤い糸”を連想し、「いと」という名前を贈りました。
バレンタインデーにお店に来たガリガリの猫
出会いは、2022年のバレンタインデー。お店の自動ドアを開けて自ら店内へ入ってきたいとちゃんは小さく、ガリガリ。店内のバックヤードに立てこもり、震えていました。
噛んだり引っ掻いたりはしませんでしたが、何かを訴えるかのようにずっと『にゃにゃにゃん…うにゃにゃん…にゃむにゃむ…』って喋っていました。
鼻水や目やにが見られたため、出会いから3日目に動物病院へ連れていこうと抱き上げると、いとちゃんは腕の中でブルブルと震えました。
不安で怖くて仕方なかったのでしょう。震えながら私にしがみついて離れなかった姿は今でも忘れられません。
動物病院では、猫風邪を患っていることが判明。店主さんは猫風邪の治療と共に健康診断やワクチン接種も受けました。
お外から来たのに全く攻撃性がなく、撫でて欲しそうに頭を擦り付ける姿が健気でかわいらしくて…。絶対に手放さず、娘として育てようと決めました。
お迎え当初からお喋り好きだったいとちゃんは、家族が寝静まるとお喋りが加速。過去には、「かわい!かわい〜!か〜わい〜いね〜!」と人語を話したこともあるそうです。
誰にも信じてもらえませんが、たしかにそう喋っているのを私と主人は何度も聞きました(笑)
看板猫としての仕事は“客席ソファーで眠ること“
家族にとってかけがえのない存在になった、いとちゃん。店主さんはいとちゃんが安全に暮らせるよう、お店の自動ドアを手動に変更し、脱走防止対策をしました。
看板猫としての仕事は、客席ソファーを自分の寝床にしてひたすら眠ること。接客やお出迎え、お見送りはせず、愛想も振りまかない自然体な姿がお客さんの心を掴んでいます。
最初は心配もありましたが、喜んでくれるお客様が圧倒的に多くて嬉しかった。いと目当てでご来店くださったり、「いとちゃん出勤していますか?」のお問い合わせ電話を頂くこともあります。
来店客は「接客や挨拶をいたしません」という、いとちゃんの性格を記した店内の張り紙を見て猫ファーストな対応を心がけてくれるという。
なお、いとちゃんは撫でられることが好きな一方、抱っこが苦手。家族の膝にも乗らない性格で、追いかけられると逃げてしまうのだとか。
そのため、来店時は寝ている時に優しく撫でてほしいと店主さんは呼びかけます。
リンパ腫が見つかって抗がん剤治療を続ける日々
日々、愛猫がそばにいる幸せを噛みしめてきた店主さん家族。しかし、2024年5月末には絶望も経験しました。いとちゃんに、リンパ腫が発覚したからです。
異変に気付いたきっかけは、日課であるご主人との遊びに乗ってこない日が続いたこと。食欲も落ちたため、かかりつけ医を受診したところ、病気が判明しました。
一昨日まですっごく元気だったのに…と信じられなくて、とにかくショックでした。何日もメソメソ泣いていました。
いとちゃんは、抗がん剤治療を受けることに。約7ヶ月の間に9回の抗がん剤治療を頑張ってくれました。
抗がん剤治療は半日入院し、点滴で行っている
治療後1〜2週間は副作用で食欲が落ちるため、店主さんは1日置きに病院へ行き、点滴をしてもらっています。
毎回、体重が落ちてしまうので抗がん剤を延期してたくさんご飯を食べさせる期間を設けるなど、獣医師さんと治療の間隔を相談しながら行っています。
いとは、言葉では言い表せない愛情が毎日どんどん湧いてくる存在。昨日もかわいかったのに、今日はもっとかわいい…。大好きでかけがえのない愛娘。
そう語る店主さんは命を紡ぐサポートをしつつ、これからもいとちゃんのニャン生に寄り添っていきます。この先も長く、自由奔放な仕事っぷりが見られますように。