犬派だったのに、黒猫グッズを収集するほどの猫派になった――。そう話すのは、黒猫こぐまくんと暮らすはーぴさん。
こぐまくんはエンジンルームに入り込んでいたところを救出され、飼い主さん宅へ。日々、甘えられて飼い主さんは癒しと元気を貰っています。
車のボンネットに入り込んだ黒猫を救出
出会いは、2022年6月11日。雨上がりに友人と散歩をしていた飼い主さんは、子猫の声を耳にしました。
保護時のこぐまくん
鳴き声は、近くに止めてあった車のボンネットから。
下から救出しようかと思ったんですが、難しくて。だから、車の持ち主さんが戻ってくるのを待ちました。
20分後、車に戻ってきた持ち主の親子は事情を知って驚いたものの、救出活動に快く協力してくれたそう。
許可を得て「猫バンバン」をするも子猫は出てこず、エンジンルーム内を移動。飼い主さんは電話で父親に車の構造を聞きながら、救助を続けました。
すると、一緒に救助していた友人が「今、動いた気がする!」と、エンジンルームの隙間にいる子猫を発見。手を入れると、フワっとした被毛の感触がありました。
救出できた子猫は、わずか230g。
エンジンルーム内で動き回れるくらい小さな猫でもボンネットに入りこめ、猫バンバンしても出てこないことがあるのだと知りました。ボンネットを開けた時に猫の姿がなくても、猫がいる可能性があるため、猫バンバンすることや隠れていないか要確認することは大事だと感じました。
信頼できる友人に保護した子猫の命を託した
保護した場所から自力で動物病院へ行くことは困難だったため、飼い主さんらは車の持ち主さんにお願いし、動物病院へ乗せて行ってもらったそう。
道中では、車の持ち主さんが2kg離れた場所から来ていたことが判明。子猫に目視できる怪我がなかったことに、全員が安堵しました。
動物病院では、真菌が皮膚に感染して起こる「真菌症」であると診断されましたが、他に病気や怪我は見られず。自宅で保護したい気持ちはあったものの、飼い主さん宅は猫アレルギーでペット不可物件に住んでいたため、断念。
一緒に保護した友人宅にも難病の犬がいたため、動物病院での勤務経験がある働いた友人のBさんに子猫を預かってもらいました。
子猫はBさん宅で、スクスクと成長。ある日、飼い主さんはBさんから「1~2日ほど留守にしなければならなくなったので、子猫を預かってほしい」と言われました。
そこで大家さんに許可を貰い、自分たちが保護した子猫を初めて自宅にお迎え。それを機に日常が変化していくこととなります。
里親を探す中で「我が家に迎えたい」と思うように
当時、子猫はワクチン未接種。3匹の先住猫がいたBさん宅では、ケージがある1室で過ごしていたため、飼い主さん宅で初めて走ったり無邪気に遊んだりしました。
その話をBさんにすると、「伸び伸びしていて楽しそう」と喜ばれ、飼い主さんの中で「里親が見つかるまで預かりたい」という想いが強くなっていったそう。
そこで、大家さんに再び交渉。壁などに傷がつかないように保護をし、においにも気を付けるなどの条件付きで短期間の飼育を許可してもらえました。
ワクチンを済ませて里親を探す。そう思い、飼い主さんは子猫と暮らしていましたが、愛はどんどん募っていき、自宅に迎えたいと思うように。
生後 2 週間だったこぐまが私と出会ったくれたことにご縁を感じましたし、色々な方の協力や助けがあって命が助かり、ありがたみを感じたので私が育てたいと思うようになりました。
次の引っ越しまで子猫を飼育することを許可してもらえないだろうか。そう思い、再度大家さんに相談したところ、他の人に迷惑をかけないようにするという約束のもと、特別に許可してもらえたそう。
子猫は首元が白くてツキノワグマのようであったことから、「こぐま」という名前を貰い、正式な家族となりました。
初めての猫ライフで知った“猫のすごさ”
猫アレルギーの症状は、心配していたほど出ず。迎えた当初は目や肌に少しかゆみが出たものの、毎日、猫吸いできるようになるほど体が適応してくれたそう。
不思議なのは、こぐまくんとの触れ合い時のみアレルギー症状が出ないこと。
他の猫ちゃんだと少し出ます。猫によって生成されるアレルゲンの量が違うことも関係しているのかもしれませんが(笑)
こぐまくんは、小さな頃から甘えん坊。ケージの外で過ごすようになって1ヶ月ほど経った頃から飼い主さんと一緒に眠っています。
ケージで過ごしていた時も、出したら泣き止み、傍で眠るような子でした。
子猫期には3時間置きの授乳が必要でしたが、飼い主さんは大変だとは全く感じなかったそう。
それよりも、人間としか生きていないのに、誰から教わっていなくてもトイレをし、本能で爪を研ぐ姿に感動しました。
飼い主さんラブなこぐまくんは、お留守番が苦手。飼い主さんは在宅ワークであるため、少しずつ留守の時間を長くし、お留守番に慣れさせていきました。
今でもお留守番は苦手で、8時間ぐらい経つとドアを見つめて帰りを待っています。
パズルのピースがはまるような出会いに感謝
たっぷり愛情を注がれた愛情を注がれたこぐまくんは2024年6月11日、無事1歳に。わずか230gだった体重は、5.4kgまで増えました。
誕生日会にはこぐまくんの” 義母” として、保護時に協力してくれた友人も参加
寝ている私の上で香箱座りするんですが、子猫の頃は体の上に全身が収まっていたのに今は、はみ出てる。大きくなったなと思います。
ふたりの日課は、起床後にする「待て待ての遊び」。廊下と部屋を使って行う、この追いかけっこは、こぐまくんのお気に入り。おもちゃで遊ばない時でも、楽しそうに駆け回ってくれます。
座っている時、こぐまは膝に乗り、こっちを向いてくれます。顔を撫でながら話しかけている時が、一番幸せです。
なお、こぐまくんは知的で、ドアの隙間に入ったおもちゃを自ら取らず、「取って」と言うように飼い主さんを見つめることもあるのだとか。
猫が、こんなにも意志があり、コミュニケーションが取れる生き物であることに驚きました。賢いし、色々なことを理解しています。
実は飼い主さん、こぐまくんに出会った頃、心が沈んでいた時期だったそう。そんな日々を変えてくれたこぐまくんのことを、“神様がくれたプレゼントだと思っています。
毎日が楽しく、劇的に明るくなりました。こぐまもきっと、あの日通りがかったのが私でよかったはず。パズルのピースがはまるような出会いでした。
人間には色々な娯楽があるけれど、こぐまはひとりでは遊べない。だから、遊ぶ時間を積極的に作りたいし、猫コミュニケーションを知れるニャン生になるように2匹目のお迎えも検討中。
明るい表情で未来図を話す飼い主さんは、保護猫を迎える文化が社会により根付くことを願ってもいます。
血統書がなくても、こぐまみたいに自分から選ばずに出会った子でも猫はみんなかわいいし、家族を待つ保護猫はたくさんいる。保護団体の譲渡条件は厳しいこともあるけれど、保護猫を迎える人が増えてほしい。
出会うべくして出会った、運命の相手。飼い主さんとこぐまくんのこれまでには、そんな言葉がよく似合います。