猫という動物は愛くるしいだけではなく、ネコ科動物ならではの凛々しさがあるもの。そんな魅力をキャンバスに描いているのは、画家・かとうゆずさん。
作品名:「遊んでくれない」
実は、かとうゆずさん自身、大の猫好き。技術力の高さはもちろん、ユーモアも光る猫のアクリル画や日本画を多数公開しています。
自分が本当に描きたいものは「猫」だったと気づいて…
高校生の頃から日本画を描くことに憧れを持ち続けていた、かとうゆずさん。大学で学びを得て、すっかり画材の虜に。大学卒業後も、動物や植物をモチーフにした作品を描き続けていました。
しかし、その中で、自分は何をテーマに作品を描き続けているのか…と、息が詰まる時期があったそう。そこで、子どもの頃には夢中になって何を描いていただろうと原点を振り返ることに。すると、蘇ってきたのが、ずっと猫を描き続けていた自分の姿でした。
だから、もう一度、猫を主役にしてみようと思ったんです。それから9年くらい、猫を中心に描き続けてきました。
作品名:「温めておきました」
SNSで大きな反響が寄せられた日本画「虎の威を借る」は自身にとっても、思い入れがある一作。
やっぱりこれかな。
『虎の威を借る』和紙/岩絵具/水干絵具/胡粉 pic.twitter.com/kmy02G0gf9
— かとう ゆず (@YuzuKato2) December 28, 2022
実はかとうゆずさん、昔から江戸絵画の虎が大好きで、何年も前からオマージュ作品が描きたいと思っていたものの、テーマが決まらず悩んでいたそう。
そんな時、愛猫・千凪(せな)くんが自分の陰に隠れながら来客に威嚇している姿を見て、インスピレーションを得ました。
愛猫の千凪くん
これだ…と。その時、千凪はまだ子猫だったので、余計に「虎の威を借る猫」に見え、あまりにもかわいかったので描きたくなりました。
ただ、当時は技術力がまだ追い付いていないと感じていたため、作品を形にできたのは、ごく最近のこと。長年、温め続けた作品が多くの人の目に留まり、喜びもひとしおです。
これまでに描いた他の作品にもそれぞれ思い入れはありますが、特に印象深いのは今の活動の原点となっている大学の卒業制作。
森の中で黒猫が振り返っている日本画
当時は猫画家としての活動を考えていませんでしたが、集大成として猫を描いて残したいと強く思ったのが、自分でも不思議です。
かとうゆずさんは、この絵を思い出すたび、改めて自分にとって猫が特別な存在であることを再確認します。
どの作品にも溢れている“愛猫への愛情”
猫愛がこもった作品の数々は、サイズなどによっても制作期間が異なりますが、構図をし、下書きが決まるまでにかかる月日は約1週間。
作品名:「子猫探検隊」
彩色はアクリルだと3~4日くらい、日本画だと6日~10日ほど。
なお、アクリル画と日本画では猫の姿に違いが出るそう。アクリル画は透明度が高いため、ポップで透き通った表現に。
作品名:「小夜の海」
対して、日本画は落ち着いた色合いとザラザラした物質的な絵肌を表現できるため、シックで迫力のある作品に仕上がるのだとか。
作品名:「初黄葉」
実は、ほぼ全ての作品は愛猫の千凪くんがモチーフ。
模様は変えていますが、特に顔は千凪をもとに描いています。ありがたい存在です。
過去には、千凪くんの模様を変えずに「つちねこ」という日本画を描いたことも。
甘えん坊、寂しん坊、食いしん坊の三拍子である千凪くんは、思いもよらないおもしろい行動や人間臭い表情をすることがあるため、日々、目が離せないのだとか。
彼の一挙手一投足を大切に見ながら、これからも一緒に過ごせたらいいなと思います。
大好きな愛猫との共同合作であるからこそ、かとうゆずさんの作品はこんなにも猫好きの心を掴むのかもしれません。