静かだけれど、人に寄り添いたい甘えん坊だった――。亡き愛猫ラテちゃんの愛くるしさを、そう語るのは飼い主のぽんちゃんさん。
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ラテちゃんは、悪徳ブリーダーのもとで生まれた子。ケージに6年間も閉じ込められ繁殖猫として酷使された後、保護猫カフェに引き取られ、飼い主さんと出会いました。
保護猫カフェで出会った“繁殖猫“を幸せにしたくて
2018年、保護猫カフェを訪れた飼い主さんは6歳半だったラテちゃんと出会いました。印象的だったのは、希望を失ったような表情。ラテちゃんはキャットタワーの隅で小さくなり、何かを諦めたような顔をしていたそう。
触れようとすると、とても怯えて…。スタッフさんから話を聞き、繁殖猫として6年間もケージにいたことを知りました。
ラテちゃんは目の前でおもちゃを振った時だけ、目を輝かせてくれたそう。その姿を見て、飼い主さんは「幸せにしたい」と強く思い、家族に迎え入れました。
無理やり交尾をさせられてきたからか、ラテちゃんはお迎え後、同居猫たちとの接触を極端に嫌い、背後に来られると攻撃。子猫でも近寄られると走って逃げ、隠れました。
また、身動きが取れない場所へ入れられることに強い恐怖を感じていたよう。ケージや通院用のキャリーケースに入れると、怯えて失禁をしました。
飼い主さんはそうした苦しみを受け止め、お迎え当初からラテちゃんをケージには入れず。部屋の中を自由に歩き回れるよう、配慮しました。飼い主さんいわく、ラテちゃんはしばらく、新しい猫カフェに来たと思っている様子だったそうです。
繰り返された出産の後遺症で腸に深刻なダメージが…
猫も人間と同じで、妊娠・出産は体に大きな負担をかけます。何度も出産させられたラテちゃんは、その後遺症で腸に深刻なダメージがありました。
1日に何回もトイレへ行き、水のような下痢をしたり、下痢で体が汚れないように片足をあげて排便したりする姿が痛々しく、飼い主さんは様々な病院で検査や治療を行い、お腹に優しいフードを与えもしました。
でも、受けたダメージが酷すぎて手の打ちようがありませんでした。成猫なのに、ものすごく小柄でした。
ただ、家族や同居猫たちと暮らす中で、心の傷は少しずつ癒えていったよう。家での生活に慣れ始めると、ラテちゃんは女子仲間を作り、寄り添うようになりました。
しかめっ面の困り顔でしたが食べることが大好きで、ご飯の時にはクルクルの目になっていました。
また、ラテちゃんは飼い主さんの旦那さんを慕うように。お腹や首の上に乗るなどして、スキンシップを楽しんでいました。
パパさんもそれが嬉しくて、『ラテは俺が好きだなあ』とニコニコしていました。下痢がついていても気にせずに寄り添い合う姿を見るのが大好きでした。
家族思いだった“愛猫の最期”に涙
ようやく平穏な日々が訪れたかのように思えましたが、ラテちゃんは下痢によって体重が2kgに。食欲は落ちませんでしたが、2025年1月5日の深夜、体に異変が起きます。
その日、ラテちゃんは1階に向かう旦那さんを後追いしている最中によろけ、倒れてしまいました。
飼い主さん夫婦はすぐにラテちゃんを寝かせましたが、息が荒く、目を見開いている状態。その後、痙攣が起きました。
痙攣は何回も起き、だんだん酷くなっていって…。命が消えかけていることを悟りました。
繁殖猫として長く暮らしてきたラテを、こんなにも苦しめて…。猫神さまに救う気持ちはないのだろうか。どうか、もとの状態に戻ってほしい。飼い主さんはやり場のない怒りと祈りを抱きつつ、泣きながらラテちゃんを撫でました。
しかし、痙攣は次第に大きくなっていったそう。苦しみ続けるラテちゃんを見て、飼い主さんの心境は少し変化していきます。
こんなに苦しめるなら、いっそ楽にしてあげてほしい。優しく虹の橋を渡らせてくれと祈りました。
痙攣が起きて3時間ほど過ぎた頃、なんと思わぬ奇跡が。痙攣が収まり、飼い主さんが呼びかけるとラテちゃんは目を見て、優しいスリスリをしてくれたのです。
危機的な状態から戻ってきてくれた時
峠を越えられた。嬉しくなった飼い主さん夫婦は何度もラテちゃんをナデナデ。自分たちが眠る場所の近くに休める居場所を作り、ラテちゃんを寝かせました。
おやすみ。そう声をかけて眠りについた1時間後、ラテちゃんがいる場所から大きな物音が。慌てて駆け寄ると、目を大きく見開いたまま虹の橋を渡ったラテちゃんの姿がありました。
ラテはいつもの姿で挨拶をして、死に際は見せずに旅立っていったんです。
生まれてきた命に苦しみを強いない社会であってほしい
ラテちゃん以外にも、遺棄された子や売れ残りの子、ハンディキャップを持つ子など、様々な事情を抱える猫たちを保護してきた飼い主さん。命の終わりと向き合う時にはいつも打ちのめされ、ペットロスに苦しむと言います。
立ち直ることは、簡単ではありません。また、笑顔で思い出せるようになりたいから、とことん悲しみ、たくさん思い出して泣くようにしています。
動物の命を扱うブリーダーの中には、深い愛情を持っている人がいるのも事実。しかし、一方で命をモノと見なす悪徳ブリーダーがいることも事実です。
繁殖できなくなって捨てられる子だけでなく、ハンディキャップを負い、売り物にならないからと飼育放棄される子もいます。悪徳ブリーダーがいなくなり、苦しみを強いる環境がなくなってほしい。
動物の命をモノと見なさない社会は、どうすれば作っていけるのか。ラテちゃんのニャン生は、そう考えるきっかけも授けてくれます。