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保護猫カフェ×就労継続支援B型事業所!猫と福祉が繋がる「Nekonowa」の新しい取り組みとは?

保護猫カフェ×就労継続支援B型事業所!猫と福祉が繋がる「Nekonowa」の新しい取り組みとは?

保護猫カフェ×就労継続支援B型事業所という”新しい福祉の形”に挑戦しているのは、恵本浩史さん。

就労継続支援B型とは、一般企業で雇用契約を結んで働くことが難しい障害者や病気がある人に就労の機会や働くために必要なスキル習得の場を提供する障害福祉サービスのことだ。

愛猫くるみちゃんを抱く恵本さん

恵本さんは保護猫活動や障害者雇用の背景にある問題を知り、市役所の職員から一転。山口県・下関市で、保護猫カフェを併設した就労継続支援B型事業所「Nekonowa(ねこのわ)」の開設に踏み切った。

保護猫活動と障害者雇用の現実を知り、市役所を退職

2025年3月まで市役所に勤めていたという、恵本さん。その中で知ったのは、障害者雇用の厳しさだった。

多くの障害者の方はそれぞれの特性があり、得意なことがあるのにも関わらず、雇用先は限られており、仕事の多くは単純作業でした。

市役所では25年勤務

そうした現状に触れ、恵本さんの中では「障害のある人も活き活きと活躍できる場所を…」という思いが強くなっていったという。

一方、猫の保護活動に関わり始めたのは約1年前のこと。知人が所属する保護猫団体を手伝い、保護猫を預かるようになったのだ。

恵本さんはそれまで、猫の保護活動は猫好きな人が自分のできる範囲で楽しく猫を助けてくれているのだろうと思っていたそう。だからこそ、現実の厳しさに衝撃を受けた。

現在は初期医療費などを保護主さんにお願いしていますが、当時、私が手伝っていた保護団体での保護活動は無償のボランティアで行われており、猫の医療費やお世話にかかる費用をほぼ全額、ボランティアさんが自己負担。保護依頼への対応や譲渡時の自宅訪問も仕事の合間をぬって行っていることを知りました。

身を削るような保護猫活動を目のあたりにした恵本さんは、活動資金の枯渇が心配になった。

また、大変な業務であるがゆえに人手不足となり、活動の継続が困難になることもあるのではないかと不安になったという。



保護猫カフェ×就労継続支援B型事業所のオープンに向けて

保護猫と障害者を取り巻く現状を変えたい。そう思った恵本さんは、双方を救う福祉サービスを考えるようになる。

その中で浮かんだのが、障害者や病気の人が「就労継続支援B型事業所」として認められた保護猫カフェで働くという斬新なアイデアだ。

事業所の外観

保護活動を事業と結びつければ活動が継続しやすくなりますし、障害者の方は猫に癒されつつ、動物に関わる仕事も検討できるようになると思ったんです。

恵本さんが思い描いた就労継続支援B型事業所は一般的な形ではない。そのゆえ、事業内容を理解してもらうことが難しく、融資を受ける際などには事業利益の説明に苦しむこともあった。

お店のロゴ

また、保護猫カフェと就労継続支援B型事業所はどちらも許認可が必要であり、施設の設備は法令に準じた形にしなければならないなど、やることは膨大。

今は、有資格者の確保が課題です。就労継続支援B型事業所に配置が必須のサービス管理責任者が確保できておらず、オープン予定日が延びています。

課題も考えなければならないことも山積み。だが、恵本さんは諦めない。障害の有無に関わらず、全ての人が生きがいを持って活躍できる社会を作りたいからだ。

事業所内

人にはそれぞれ違いがありますが、それはその人の特性であり、特徴だと私は思う。誰もが自分の特性を活かして活躍できる社会であれば、みんなが笑顔で過ごすことができるはずです。

「Nekonowa」は一般の人も利用できる、“小さな社会”のような就労継続支援B型事業所であるからこそ、自分や他者の命を見つめ直すきっかけも授けてくれる。

猫と暮らした経験がない人も働きやすい就労継続支援B型事業所

「Nekonowa」では保護団体である程度、人馴れしてもらった猫を預かり、里親を探す。主な業務内容は猫のお世話や人馴れ訓練だが、恵本さんは施設以外の場所での委託業務として、他の保護団体が運営するシェルターの掃除・管理、同市内にある猫カフェの運営を手伝うなどの仕事も任せたいと考えている。

猫グッズの制作や販売も行いたいですし、ワンちゃんのトリミングのお手伝いなど、猫以外の動物に関する仕事も通して、就労に関する知識や経験を積んでいただく予定です。

なお、「Nekonowa」では動物と暮らした経験がない人も安心して働ける。恵本さんは小動物飼養販売管理士であり、愛玩動物飼養管理士のスタッフもいるからだ。

また、保護猫団体のボランティアが定期的に来てくれ、猫への接し方や飼養の注意点など教えてくれるという。

グッズ制作に関しても、猫グッズのハンドメイド作家さんがワークショップを行ってくれるので、ご自身のできることから始めていだだけます。

猫がいる就労継続支援B型事業所なら癒され、通い続けやすくもなるはず。そう話す恵本さんは、マイペースで同じ言葉を喋れない猫との交流は他者を思いやる気持ちを育むと信じている。

人懐っこい愛猫くるみちゃんが「店長猫」として常駐!

「Nekonowa」は、2025年9月オープン予定。多忙な日々の中で、恵本さんは心が折れそうになることも。そんな時、癒しをくれるのは愛猫で「Nekonowa」の店長猫になる予定の「くるみ」ちゃんだ。

くるみちゃんは、とある家で保護された元野良猫。保護主さんに持病があり、飼育が困難だったため、保護団体のもとへ。その後、恵本さんが一時預かりをした。

当初、恵本さんは猫を迎えるつもりはなかった。愛猫ができると、預かれる猫が減ると思ったからだ。

くるみちゃんは人懐っこく、預かり初日から顔のそばで添い寝してくれたそう。しばらくすると、譲渡会デビュー前に里親希望者が現れた。

子猫の様子を見守る、くるみちゃん

だが、その時は「留守が多い」という理由で、里親希望者はトライアルを辞退。譲渡の話は立ち消えた。

その後、くるみちゃんは別の預かりさん宅へ行くことに。しかし、直後に耳の後ろが赤くなって腫れるという原因不明の症状が現れ、再び恵本さんのもとへ。不思議なことに、戻ってくると体調は良くなった。

これは一緒にいる運命だと感じ、お迎えを決意しました。ちょうど、「Nekonowa」に常駐してくれる人好きの猫がいてほしいとも思っていたので、店長をお願いしました。

くるみちゃんは、恵本さんの気持ちに敏感。落ち込んでいると必ず膝に乗り、ゴロンとして癒しをくれる。

猫は、人の気持ちや体調が分かるのだなと感じることがよくあります。私のように猫の癒しを必要としている方や新しい福祉の形を心待ちにしている方のためにも、頑張っていきたい。

動物愛護×障害者雇用という重みのある2本柱から成り立つ「Nekonowa」。そこに込めた恵本さんの強い想いが、より多くの人に届くことを願う。

保護猫カフェ/就労継続支援B型事業所Nekonowa(ねこのわ)

住所:山口県下関市山の田東町7-25
電話番号:0832-42-5772
営業時間:11:00~19:00
利用料金:大人60分…税込1000円(※延長30分ごとに500円)
定休日:火曜日小学生以上の小人60分…税込500円(※延長30分ごとに250円)
SNSなど:ホームページインスタグラム