特集
情報がほとんどない”子猫のてんかん発作” 愛猫の命と向き合った家族の記録

情報がほとんどない”子猫のてんかん発作” 愛猫の命と向き合った家族の記録

愛猫に予期せぬ病気が見つかると、飼い主は向き合い方に悩むこともある。しゃけちゃんは、子猫の時にてんかん発作を発症。検査の結果、右脳に奇形がある「構造的てんかん」であることが判明した。

子猫のてんかん発作に関する情報は少ない。だが、飼い主さんはしゃけちゃんを温かく見守りながら、安全に伸び伸び暮らせるよう、生活環境を整えていった。

野良の母猫から託された3つの命

出会いは、2024年6月のこと。飼い主さん宅の裏庭に、母猫と子猫3匹が姿を見せるようになった。旦那さんは、喘息持ちの猫アレルギー。悩んだ末、旦那さんの誕生日に出会った縁や子猫らしい愛くるしさに心奪われ、保護を決意する。

そんな中で起きたのは、子猫だったしゃけちゃんが外壁と室外機の間に挟まってしまうというアクシデント。

この子はなんだかほっとけないと思い、我が家にお迎えしようと思いました。

飼い主さんはお迎えの準備を進めつつ、兄妹猫2匹の里親も探しながら、1カ月ほど親子を見守った。

母猫としゃけちゃん

保護時には「親子を引き離して申し訳ない」という罪悪感に駆られたが、母猫は香箱座りをしながら保護を見守り、飼い主さんに向かってゆっくりと瞬きをしてくれた。

その姿を見て、子猫を託されたと感じました。母猫は子猫の保護後、姿を見せなくなりました。



猫用ベッドの周りがビショ濡れに…判明した「構造的てんかん」

保護時、しゃけちゃんは猫風邪を患っており、兄妹よりも体が小さかった。兄妹でじゃれる時には、反応がワンテンポ遅かったそうだ。

しゃけちゃん以外の2匹は里親宅にトライアルへ。だが、野性味が強かったため、お迎えとはならなかった。

なんとか家猫にしてあげたかったのですが、我が家も地域の皆さんも様々な事情で厳しくて…。知人の保護シェルターもいっぱいで保護活動の難しさを痛感しました。

2匹は近所の人々にかわいがられていたため、避妊・去勢手術を行い、地域猫になった。

しゃけちゃんのてんかんが判明したのは、お迎えから1カ月後のこと。ある日、帰宅すると、猫用ベッドや周辺の床が濡れていた。熱があり、元気もなかったため、翌朝、動物病院へ。異常は見つからなかったが、その後も同じ症状が続いた。

そして、最初の異変から2週間後の早朝、バタバタという音で目覚めた旦那さんは激しいてんかん発作を起こしているしゃけちゃんを発見する。

夫が発作の様子を動画に撮ってくれたことで、診断に繋がりました。撒き散らされていた液体は、口から吹いた泡と尿でした。

猫のてんかんは、大きく2種類に分けられる。脳に異常がない原因不明の「特発性てんかん」と、脳腫瘍や炎症など脳の構造的異常が原因で起こる「構造的てんかん」だ。当初、しゃけちゃんは特発性てんかんと診断されたが、初めての発作が6ヶ月未満と早かったため、MRI検査を受けた。

その結果、右脳に先天的な奇形があることが判明。構造的てんかんの診断が下りた。

愛猫の「構造的てんかん」との向き合い方

しゃけちゃんの場合は、早朝のウトウトしている時に発作が起きやすい。発作時には意識がないまま全身が痙攣し、泡を吹いたり失禁をしたりしながら手足をバタつかせて転げ回る。

2~3分すると意識は戻りますが、体力をかなり消耗するようで、しばらくぐったりします。

発作時、家族は動画を撮影する。起きた日時や継続時間、症状が一度に記録できるからだ。

発作後の様子

周りの安全を確保して、落ち着くまで触らずに見守ります。発作が5分続く場合は点鼻薬を打たなくてはなりません。

現在は抗てんかん薬を1日2回服用し、定期的に血液検査を受けている。しゃけちゃんは投薬を開始してから半年ほど経つ頃には発作後の回復が早くなり、失禁をしなくなった。ただ、意識が戻った瞬間に驚いて大ジャンプをするため、家族は発作が落ち着きそうなタイミングでタオルをかけ、視界を遮るように工夫している。

薬を飲み続ける以上、肝臓や腎臓への影響が心配なので血液検査は大切です。しゃけの場合は大きい発作の前に、頭や目がビクッとなる焦点性発作が頻発することが分かってきました。

焦点性発作時の様子

一生治らない構造的てんかんがあっても、この家で安全に伸び伸びと暮らしてほしい。そんな思いから飼い主さんは自宅のスケルトン階段をネットで覆い、しゃけちゃんが家中を安全に行き来できるようにした。

子猫のてんかんは情報が少なく、ずっと不安でした。でも、てんかんはお薬が合えば健常猫と変わらずに一生を終えられる可能性が高い病気だと知りました。一生お付き合いしていく病気だからこそ、発作を怖がりすぎず、たくさん思い出を作っていきたいです。

かわいいを更新し続ける愛猫とのコミカルな日常

昨日もかわいかったし、今日もかわいい。きっと明日もかわいくて、日々、かわいいを更新し続けている存在――。飼い主さんは、しゃけちゃんの魅力をそう話す。

初めて猫と暮らす中で知ったのは、意外と「ニャーン」と鳴かない生き物であるという事実。しゃけちゃんは、ほぼ口を開けずに『ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛』と鳴く。

友人には建て付けの悪いドアの音と言われました(笑)

ただ、旦那さんと話す時だけはなぜか、かわいい声で「ニャーン」と鳴くのだそう。その声で話しかけられたことがない飼い主さんは嫉妬を募らせている。

また、しゃけちゃんは尻尾もミステリアスだ。なぜか感情と連動しておらず、嬉しくて喉を鳴らしている時も怖い思いをした時も尻尾が反応しない。

しゃけは、尻尾の先がちょっとだけ曲がっているかぎしっぽ。その小さなかぎしっぽで、たくさんの幸せを引っかけてくれています。

自宅に“確実なかわいい“が存在してるって、すごいこと。そう話す飼い主さんはてんかん発作と上手く付き合いながら、これからもしゃけちゃんと生きていく。その日常は、同じ病気の愛猫と暮らす人に希望を与えることだろう。