手術時や貧血性の病気を治療する時には猫も人間と同じく、輸血が必要になることがあります。しかし、日本には動物用の血液センターがないため、緊急時には動物病院で暮らす「供血猫」に頼ったり、ドナーとなってくれる子を自分で探したりしなければなりません。
ラグドールのアオくんは2024年9月、供血猫となり、知り合いの猫ちゃんを救いました。
飼い主さんは、初めての「供血」で多くの学びを得たと言います。
リモートワークを機に「ラグドール」をお迎え
アオくんは、ラグドールという猫種。コロナ禍でリモートワークになったことから、飼い主さんは2022年6月にお迎えし、愛を注いできました。
当時、生後4ヶ月だったアオくんはお腹の調子が悪く、下痢が続く日々。トイレの処理に悪戦苦闘したり、頻繁に病院へ駆け込んだりしたことは今、振り返れば宝物です。
アオはリモートワーク中、構ってほしくて邪魔しにくるのですが、抱っこすると嫌がり、逃げていきます。どうしてほしいのか、いまだに分かりません(笑)
自分が甘えたい時だけ寄ってくるアオくんですが、「お尻トントン」はいつでも大歓迎。飼い主さんがソファーに座ると、チャンスとばかりに駆け寄ってきます。
好きな遊びは、追いかけっこ。しかし、しばらく遊ぶと、お腹を見せてゴロン。かわいらしい「降参」の合図にも、飼い主さんは癒しをもらっています。
母親経由で知り合い猫への「供血」を相談されて…
供血をすることになったのは、母親の友人の息子さんと暮らす猫ちゃんが白血病になったからでした。その猫ちゃんはアオくんと同じ、ラグドール。貧血がひどく、輸血が必要な状況でした。
もともと母親同士でやり取りがあったため、飼い主さんは自身のお母さん経由で供血の相談を受けたそう。
運よく都合を合わせられ、たまたま互いの家が近かったのでご縁を感じ、協力しよう、協力せねば、と感じました。
ただ、アオくんを大切に思うがゆえの葛藤もあったよう。自分の勝手な想いや考えで、何も事情が分からない愛猫に痛くて辛い思いをさせることに申し訳なさを感じました。
それでも協力しようと思ったのは、「情けは人の為ならず」、「明日は我が身」という想いがあったから。
いつかアオが同じような状況になった時、誰かに助けてもらえますように…と思い、決意しました。
血液適合の検査もクリアして”50mlの血液”を提供
猫の血液型はA型、B型、AB型の3種類。人間と違い、O型は存在せず、B型の子は少ないと言われています。
アオくんは、A型。飼い主さんは供血のタイミングで血液検査を行い、初めて愛猫の血液型を知りました。
また、猫の供血では拒絶反応を起こさないために血の相性がより重要になることや、事前に血液型が分かっているだけでは供血できず、供血・輸血する猫同士で血液適合のための検査(クロスマッチテスト)が必要なことも初めて知りました。
供血する犬・猫には年齢制限もあるそうです。病気や怪我に備えてペット保険には入っていましたが、輸血にまでは考えが及んでおらず、現状を全く知らなかったことを反省しました。
アオくんはクロスマッチテストと簡易的な健康診断をクリアし、供血猫に。当日は夕方に供血をする予定だったため、朝から絶食。
絶食前には、少量の「ちゅーる」で精神安定剤(錠剤)を与えました。
血を抜く時には暴れないように鎮静剤を打ちますが、精神安定剤も念のため飲ませることにしました
鎮静剤の投与には多少のリスクがあり、飼い主さんは事前に承諾したそう。供血後は、鎮静剤が切れたタイミングでお迎えとなりました。
迎えに行った時は見たことがないほど興奮して怒っていました。家に着くまでずっと唸っていたので申し訳なかったです。でも、アオの血がすぐに輸血されているのを見て、少しでも元気になってほしい、役立ってくれたらいいなと思いました。
輸血が必要な時に頼れる“ネットワーク作り”の必要性を痛感
アオくんの供血を経て飼い主さんが感じたのは、いざという時に協力しあえるネットワークを作ることの必要性でした。
動物用の血液センターがなく、輸血が必要な時に血液を提供してくれる「供血猫」がいない動物病院も多い今、愛猫の輸血を確保するには自分で相手を探す必要があります。
だからこそ、いざという時に慌てなくてもいいよう、SNSやリアルなネットワークで繋がりを持っておくのが現実的な準備であると飼い主さんは感じました。
願わくば、近くに住んでいる者同士が繋がれるよう、かかりつけの動物病院からの発信で供血の助け合いネットワーク作りが行われてほしいです。
近年は犬猫用の人工血液の研究が進むなど、動物の救命医療も着実に進歩していますが、実用化に至るにはまだ月日を要するため、各々で愛猫の命を紡ぐ準備をしておくことが大切。
また、SNSなどで「供血猫さん募集」の投稿を見かけた時には、できる限り協力するなど相互支援の輪を広げていくことも、救える命を増やすことに繋がります。
アオくんと飼い主さんの経験は、日常の中であまり見聞きしない「供血」について考えるきっかけになります。