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【愛知・名古屋市】「家を空けられない」が理由で家族を持てない猫を減らしたい… ケージレスで窓から景色が見える個室の「ねこのホテル ちぐら」 

【愛知・名古屋市】「家を空けられない」が理由で家族を持てない猫を減らしたい… ケージレスで窓から景色が見える個室の「ねこのホテル ちぐら」 

家を空ける時の預け場所がないという理由から、家族を持てない猫を減らしたい――。愛知・名古屋市にある「ねこホテル ちぐら」はそんな想いから生まれた、猫ファーストな猫専用ホテルだ。

オーナーの大瀧綾さんはホテル内に、猫たちが伸び伸びとくつろげる個室を10室以上完備。猫たちはケージの中ではなく、見晴らしがいい個室でリラックスしながらお迎えを待てる。

猫アレルギー持ちの犬派だったのに「猫沼」にハマって…!

実は大瀧さん、猫アレルギー持ちの犬派だった。会社での設計業が本業で、カフェバーも経営。経営するカフェバーの近くには野良猫が住み着いており、自然に店内へ入ってくることも多々。いつからか、大瀧さんはそうした猫たちの里親を探すようになった。

経営しているカフェバー

私は東北地方の出身で東日本大震災の後に地元へ帰った時、人も猫も食べるものがない状況の悲惨さに愕然とし、過酷な社会に生きている外猫たちに目が行くようにもなりました。

毎日カフェバーへ来るも、7年以上保護できなかったシニア猫

そんな大瀧さんを本格的に猫沼へ引きずり込んだのは、会社メンバーの愛猫だった。

その猫には噛み癖があると聞いていたため、ひょんなことから預かることになった時、大瀧さんは覚悟したそうだ。だが、予想に反して猫は大瀧さんに心を許し、甘えモードに。

ビックリしましたし、ちょっと優越感が湧いて写真を送りました(笑)

こうして猫のかわいさに気づいた大瀧さんは「成猫と暮らしたい」と思うようになり、近所の動物シェルターへ。だが、介護などの問題があるからか、スタッフから「初心者には子猫のほうが…」と勧められ、子猫ルームへ通された。

賑やかな声を発する子猫たちを見て一瞬、「私に子猫は無理かもしれない」と感じたが、運命の出会いが。1匹だけ大人しかった、茶トラ猫の「きなこ」ちゃんが気になったのだ。

現在10歳のきなこちゃん

ただ、その場でお迎えは決めきれず。1週間後に来店した時にいたら、お迎えしようと密かに誓った。

そして1週間後、シェルターへ行くと、そこには大瀧さんを待っていたかのようなきなこちゃんの姿が。

お迎えから1週間後のきなこちゃん

後で分かったのですが、きなこは軽い猫風邪を引いていて大人しかったようです。治ったら、本領を発揮し始めました(笑)

ビニール袋を口にしてしまう癖がきなこちゃんにあると知った時、大瀧さんはすぐにゴミ箱を撤去。犬は人に従事するが、猫は人が従事してしまう間柄なのだと学んだ。

猫は飼い主側が考え方を変えてイタズラなどに対処していくことが求められるが、それが結果的にいい結果に繋がることが多い。大瀧さんは、そんな発見もした。

私の場合は、きなこのおかげで家が綺麗になりましたし、何事も少し柔軟に考えられるようになった気がします。ちなみに、猫アレルギーは薬で対処しています。



「家を空けられない」の理由で家族に出会えない猫が減ってほしい

猫専用のペットホテルを作ろうと思ったのは、カフェバーで保護した猫たちの里親を探す際、「家を空けられない」という理由で猫を迎えることを断念する人が想像以上に多い現実を知ったからだ。

猫は環境の変化に敏感なため、近年ではペットシッターに頼る人も増えているが、留守中に他人を自宅に入れるハードルは高い。家族を持てる猫を増やすには、安心して預けられる場所がなくては…。

そう感じた大瀧さんは、会社の設計メンバーや協力的な工務店の力も借りつつ、2025年2月、ケージレスで全部屋に窓がある個室の「ねこのホテル ちぐら」をオープンさせた。

お部屋への入り口

なお、「ねこのホテル ちぐら」の外観で存在感を放っている猫は、大瀧さんを猫沼に引きずり込んだ会社メンバーの子。会社メンバーの家族がキャラクター化してくれたのだ。

ホテル内には、3タイプの部屋を完備。「スタンダードルーム」は全4室。1.5畳以上の広さがある。(1日5,000円)。

より広い部屋で伸び伸びと過ごさせてあげたい場合は2畳以上の「ミディアムルーム」(全5室完備/1日6,000円)や4畳以上の「デラックスルーム」(全6室完備/1日8,000円)も検討できる。

広々としたデラックスルーム。遊び好きな活発な子も満足できやすい

全室、部屋のレイアウトは違うが、どの部屋にもキャットステップや窓がある。

会社メンバーと共に部屋の広さにこだわったのには、猫の快適さを追求したことだけが理由ではない。自宅で使用している猫トイレや爪とぎなど、猫が安心できるものを飼い主が持ち込めるようにとの想いもあってのことだ。

ミディアムルーム

預かり時は、飼い主さんにもお部屋に入ってもらいます。キャリケースは基本的に、室内に置いていってもらいます。怖がりな子は、キャリケースに隠れたいこともあると思うから。

なお、「ねこのホテル ちぐら」では内見したい時やホテル内での愛猫の反応を確認したい時に利用できる1時間のトライアルコース(1時間1,000円)も設けている。

地域で連携して「猫を守れるサイクル」を作りたい

大切な命を預かるからこそ、「ねこのホテル ちぐら」では猫が宿泊する部屋と玄関までの距離を離し、脱走防止対策。空調管理や換気など基本的な気遣いはもちろん、食欲や排泄の状態をこまめに気にかけ、体調を崩さないようにも配慮している。

また、大瀧さんはお世話係となるスタッフにもこだわった。知識がある猫好きな学生スタッフにも働いてほしいと思い、複数校の動物関連の学校に出向いたのだ。その中で、ある就活担当の教師が親身に話を聞いてくれ、学生たちに大瀧さんが思う「猫を家族に迎えたい人を増やしたい理由」を的確に伝えてくれた。

今、ホテルでバイトしてくれている学生スタッフは、私の想いに共感してくれた子たち。みんな将来の職種先は違いますし、たった1年間の付き合いになるかもしれませんが、学生たちにとっても大事な時間にもなるように寄り添いたい

大瀧さんらたちスタッフは猫を預かる際、さりげない雑談で聞いた生い立ちや性格を考慮しながらケアにあたっている。

預けた時よりも、ちょっと綺麗になっておうちに帰ってほしい。ホテルスタッフたちは猫を預かるたび、そう思い、ケアに注力している。

預かり猫ちゃんがいない時は学生と近所の猫カフェさんで“ケアの修行”をさせてもらっています。学生たちも、学校では学べないことをたくさん教わっているようです。

なお、ホテルスタッフは飼い主さんのメンタルケアも欠かさない。預かり時には1日に1回、飼い主さんに写真や動画を添えたメッセージで様子を報告。入院など、長期的な預かりの場合はペットカメラで愛猫の姿を見られるような体制もとっていきたいと考えている。

綺麗な言い方をすると、猫に恩返しがしたくて。自分には保護活動は無理だと感じたので、ホテルの収益を近所の猫カフェさんに寄付するなど、地域でいい循環を作り、家族を持てる猫を増やしたい。

猫の出会いによって、人生が180度変わった。そう話す大瀧さんとの猫談義も盛り上がる「ねこのホテル ちぐら」は、2025年夏に完成予定となっているIGアリーナーの近くにある。お店のコンセプや想いは今後、より多くの人々に届くことだろう。

ねこのホテル ちぐら

住所:愛知県名古屋市西区上名古屋1-6-28-2F
電話番号:080-4223-8463(臨時の際:052-982-9896)
お預かり・お迎え受付対応時間:10:00〜13:00(受付12:30まで)、17:00〜20:00(受付19:30まで)
※予約や問い合わせの電話は時間外でも対応
ホームページ:https://www.nekocigura.com/
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