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倉庫で見つかった天使のような子猫「ポッケ」ちゃん・・・北国の冬を前に始まった家族の物語

倉庫で見つかった天使のような子猫「ポッケ」ちゃん・・・北国の冬を前に始まった家族の物語

北の大地・北海道で農業を営む「毛だらけ」さん家族。10月のある日、秋の陽が傾きかけた頃、倉庫の2階から聞こえてきたのは、助けを求める子猫の鳴き声でした――。厳しい冬を前に、新たに始まった家族の物語を紹介します。

天使のような子猫ちゃん

危機一髪!古い倉庫での運命の出会い

10月24日の午後、北海道の秋にしては暖かい日。畑で仕事に精を出していた毛だらけさんのもとに、突然の電話が入ります。それは夫さんからの「倉庫で子猫を見つけた」という一報でした。

倉庫とは名ばかりの旧馬小屋。古い木造で、あちこちいたんでいるんです。2階の床板は隙間だらけで、その隙間から、まだ赤ちゃんサイズの子猫が落ちそうになっていました。

夫妻は迷いました。「付近に母猫がいるかもしれない」。後先考えず、母猫が子育てしている子猫に触れて、人間の匂いがついてしまえば、母猫がその匂いを警戒して子育てを放棄してしまう可能性があります。その事態は避けたいところです。しかし、もし子猫が2階から落ちたら…。そんな命の危機を見過ごすことはできません。夫妻は救助を決意しました。

夫が手袋をして慎重に2階から捕まえてきて、お湯の入れたペットボトルと一緒にダンボールに入れました。小屋のすぐ横のビニールハウスに置いて、離れたところで、母猫のお迎えがあるまで見守ることにしたんです。

しかし、母猫は姿を見せないまま、2時間が経過。日は暮れかけ、気温はどんどん下がっていきます。「このまま置いていくわけにはいかない――」。保護を決意した毛だらけさんは、子猫を連れて動物病院へと急ぎました。子猫はわずか210g。まだ離乳していないとのことでした。

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「これも縁」家族として迎える決断

保護したものの、毛だらけさんの心の中は、葛藤が渦巻いていました。実は、毛だらけさん一家は、わずか3ヶ月前に、黒猫の子猫を保護したばかりだったのです。その上、今は長い冬に備えた農繁期でもあり、目が回るほどの忙しさです。

こんな時期に、経験のない乳飲み子の面倒を見られるのかと、かなり悩みました。病院でミルクの与え方を見せてもらいましたが、そう簡単に飲んでくれないんですね。費用を支払えば動物病院で里親を探してくれます。その選択肢も視野に入れていました。

ミルクを飲ませるのもコツが必要

いったん、2晩は子猫を病院に預けることにして、その夜じっくり話し合いをした毛だらけさん家族。そんな中で、心に浮かんだのは、「縁」という言葉だったそうです。

縁あって来たのだし、迎え入れるのはこの子で最後と心を決めて、自分が頑張ればいいんだ、と。

小さな乳飲み子の子猫

こうして小さな命は、家族の新しい一員となることに。毛だらけさんは、子猫を病院から連れて帰ってきました。

初めての子猫育て、かけがえのない日々

子猫は女の子でした。考えた末に、つけた名前は「ポッケ」。アイヌ語で「暖かい日」を「ポㇷ゚ケ」と呼ぶのが、「ポッケ」に聞こえることに由来しています。出会った日のうららかさ、ポケットにすっぽり入るサイズの子猫に、ぴったりの名前でした。

かわいらしい命名式

初めての乳飲み子の世話は、やはりとっても大変だったそう。毛だらけさんは、ポッケちゃんのミルクの時間になると、なにをおいても仕事を一段落させ、必死に走って帰宅しました。

ミルクを飲む姿がかわいくてかわいくて。どんなに寝不足でも疲れていても、見るだけで癒されました。その期間はごく短いものでしたが、貴重な経験をさせてもらいました。

食べたらすぐ遊んでほしいポッケちゃん

食いしん坊のポッケちゃんはやがて離乳食にステップアップし、順調に体重もふえていきました。

すぐにこんなやんちゃな姿を見せるように。

箱に登ろうと頑張っている姿を撮影してXにアップしたところ、私が思っていた以上の反応があり驚いたんです。今では恐ろしいほど活発に高い所に登ったり下りたり遊んでいます。

子猫期は、ほかの猫や動物との距離感を覚える大切な社会化の時期でもあります。毛だらけさんは、そろそろ先住動物たちと会わせたいと考え始めました。

にぎやかな家族との新生活

ポッケちゃんの新しいおうちには、先住動物の犬と猫がいます。チワワのこつぶちゃん(9歳)とめいちゃん(5歳)、ねずみ捕りについていて保護されたシャムトラのミュウちゃん(3歳)、そして同じく保護猫の黒猫クロエちゃん(6ヶ月)が、新入りの猫ちゃんを待っていました。

新入りの子猫!?

感染症検査を終えるまでは、ケージの中での生活です。ケージ越しにした先住猫たちとの最初の対面では、「シャーッ」と威嚇されましたが、ポッケちゃんは持ち前の明るさで、気にしていない様子。

11月の終わりにはキトゥンブルーの瞳から卒業

12月に入り、2回目の駆虫とワクチン接種を頑張ったポッケちゃん。その後はケージを出て、先住猫たちとの本格的な交流も始まりました。毛だらけさんはハラハラしながら見守ります。

飼い主さんの心配をよそに、先住猫のミュウちゃんとクロエちゃんとプロレスごっこをすることも。少しずつ家族の輪に溶け込んでいっているようです。

ビーズを使ったダイヤモンドアートに乗るポッケちゃん

ポッケな秋の日から紡がれ始めた新しい家族の物語。ポッケちゃんも、寒いお外で、不安な思いで鳴いていたことは、もう忘れることができたのかもしれません。暖かい家の中で、冬を越すことができるポッケちゃんの幸運に、こちらの心も温まります。