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”愛猫の月命日”に起きた奇跡…亡き看板猫が導いた「子猫との出会い」がペットロスを癒す

”愛猫の月命日”に起きた奇跡…亡き看板猫が導いた「子猫との出会い」がペットロスを癒す

岩手・盛岡市にある「バッファロー」は創業52年の歴史を持つ、手作りピザ屋。生地からこだわったピザと共にお客さんから愛されていたのは、接客をしない看板猫いとちゃんだ。

看板猫だった、いとちゃん

だが、いとちゃんは2025年3月22日、リンパ腫により、虹の橋へ。飼い主さんは悲しみに暮れたが、いとちゃんの月命日に1匹の子猫と出会い、心の雨があがった。

お客さんから愛された「接客をしない看板猫」

いとちゃんは2022年のバレンタインデーに、店の自動ドアを開け、自ら店内へ入ってきた子だ。客席ソファーを寝床するなど、媚びない接客でお客さんの心を掴み、多くの人から愛される看板猫になった。

レジ下へ行き、接客をボイコットしたことも

だが、2024年5月末にリンパ腫が発覚。10回以上も抗がん剤治療を頑張ってくれたが、2025年2月中旬、体に異変が…。抗がん剤治療後も食欲が戻らず、よろけて倒れてしまうようになった。

自動ドアから入ってきた小さな猫が“接客をしない看板猫”に…岩手・盛岡市の手作りピザ屋「バッファロー」岩手・盛岡市にある「バッファロー」は、創業52年の歴史を持つ手作りピザのお店。来店客の間で人気なのは生地から手作りした種類豊富な絶品ピザ...

いとちゃんは徐々に歩けなくなり、やがて寝たきりの状態に。頭を自力であげられなくなったため、飼い主さんは毎日通院し、強制給餌やリハビリをしてもらった。

しかし、2025年3月22日、病院の待合室で抱っこをしていた時に急変。心臓マッサージを受けるも、虹の橋へ旅立った。



ペットロス後は「抗がん剤治療」を続けた自分を責めた

いとちゃんを亡くした後、飼い主さんは毎日、自分を責め続けた。生きてほしいとの思いから、抗がん剤治療を続けたせいで愛猫の体に負担がかかり、命を落としてしまったのではないかと思ったからだ。

いとが恋しくて心が痛かった。過呼吸になるくらい、毎日わんわん泣いていました。

なんとか気を紛らわせよう。そう思い、生前の写真をもとにクッションやアクリルスタンド、ペンダントの製作を依頼。なんとか自力で、心に空いた猫型の穴を埋めようとした。

その時期には、お客さんからの「泣いてばかりいると、天国のいとちゃんの上だけ雨降りになっちゃうよ」という気遣いも心に響いたそう。四十九日を迎える頃には、愛猫の死という辛い現実の受け止め方が少し変わった。

神様は、いとがかわいいから、さっさと連れ戻してしまったんだろう。今は神様のもとで穏やかに過ごしているんだろうな、と思えるようになったんです。

相変わらず毎日、涙は出たが、少しずつ優しい気持ちで、いとちゃんとの日々を思い返せるようになっていったのだ。

“愛猫の月命日”に出会った子猫のお迎えを決意して…

そんな日々の中で、ふと思い出したのが、いとちゃんを亡くした後、かかりつけ医で言われた言葉だった。いとちゃんの火葬を終えた後、かかりつけ医へ挨拶しに行った飼い主さんは、こんな言葉をかけられたという。

すぐは、そんな気持ちにはなれないだろうけど、ぜひまたかわいい猫ちゃんをお迎えして、いとちゃんみたいに愛してあげてくださいね。

この言葉は、心に強く残った。だから、心が少し前向きになった時、新しい猫のお迎えを検討し、保護猫カフェや譲渡会へ足を運ぶようになったという。

そんな矢先、運命的な出会いが…。きっかけは、お店の常連さんから「友人が解体現場で子猫を4匹保護したと」いう連絡を貰ったことだった。

飼い主さんは、すぐ里親に立候補。決まった対面日は偶然にも、いとちゃんの月命日だった。

会いに行く時は、太陽がまぶしいことを思い出したような感覚でした。雨降りの私たち家族に、いとが傘をさしてくれたのかもしれません。

対面時、飼い主さんはなぜか、1匹の子猫に強く惹かれた。

いつもは決断力に欠ける性格なのですが、その時だけは即決できた。なんだか、いとに導かれたような不思議な感覚でした。

子猫らしい無邪気さを見守る中で「心の雨」があがった

飼い主さんは、子猫に「こよみ」という名前をプレゼント。いとちゃんは成猫になってから迎えた子だったため、飼い主さんは子猫の無邪気さに驚いたという。

こよみちゃんは、いとちゃんとは真逆で食いしん坊。最初から、哺乳瓶のミルクを上手に飲み、初めての離乳食は大興奮のまま完食した。

とても活発で、時にはサークルの柵を越えようと必死になることも。

そうした姿を見ると、飼い主さんは「いとも小さい頃、こんな風に無邪気だったのかな」と思い、微笑ましい妄想が膨む。

なお、こよみちゃんは甘えん坊で飼い主さんの声が聞こえると、寝ていても目を覚まし、鳴きながら近づいてくるそう。

そんな風に私を求めてくれる姿はかわいいし、母娘関係が築けてきているようで嬉しいです。

何をしていてもかわいい。そう話す飼い主さんは、こよみちゃんが色々なことをするたび、天国のいとちゃんに笑顔で語りかける。

いとちゃんのクッションとスヤスヤ

まるで、いとと一緒に子育てをしているみたい。こよみを迎えたことで、心に降り続いていた雨は上がり、晴れ間がのぞき、青空が広がり、虹が出て、緑が育ち、花が咲きました。

心の雨は必ず上がり、朝は必ず来る。こよみちゃんとの出会いは、そんな気づきも授けてくれたのだ。

「生まれ変わり」とは思わず、新しい命を愛していきたい

こよみちゃんを迎えたことを機に自然と笑みがこぼれるようになり、元気で甘えん坊だった頃のいとちゃんの姿ばかりを思い出せるようにもなったという飼い主さん。

こよみちゃんとの運命的な出会いを知ると、「生まれ変わり」という言葉が頭をよぎるが、飼い主さんはこよみちゃんを“いとちゃんの生まれ変わり”とは思わず、育てていきたいと話す。

生まれ変わりなら嬉しいけれど、いとには神様のそばで、もっとゆっくり過ごしてほしい気持ちもある。それに私が天寿を全うした時には絶対、いとにお迎えに来てほしいですし…。

なお、こよみちゃんが2代目看板猫に就任できるかは未知数。しばらくは、“2代目看板にゃんこ見習い”というポジションなのだとか。

一時預かり中の兄弟猫(右)と交流する様子

いととは3年間しか一緒にいられなかったので、こよみとは一緒にかわいいおばあちゃんになっていきたい。お客様とも仲良くしてもらえたら嬉しいけれど、それは欲張りかな?(笑)

こよみと巡り合わせてくれて、ありがとう。絶対にいとと同じくらい大切にする――。そんな決意を抱きつつ、飼い主さんは“そばにいる命”と“旅立った命”を愛し続けていく。