様々な病気と懸命に戦っている猫ちゃんはたくさんいますが、中には「小猫症(ドワーフキャット)」と呼ばれる珍しい病気と向き合う猫ちゃんもいます。
妖精のような愛くるしさを持つ「うりえる」くんは、小猫症。
身体は、空き缶と変わらないほどのサイズ。飼い主さんは小猫症を持つうりえるくんをサポートし、愛し続けてきました。
「小猫症」ってどんな病気?
小猫症の子は成長期に身体が成長せず、成猫になっても子猫サイズのまま。人間でいうならば、「小人症」と同じような病気です。
小猫症は主に「均衡型」と「不均衡型」の2タイプに分けられます。
・「均衡型」…顔も含め、全体的に成長しない。原因はホルモン(内分泌系)の異常だと考えられている
・「不均衡型」…四肢や背骨が極端に短いが、顔は通常サイズ。
原因はホルモン(内分泌系)の異常だと考えられており、中でも多い原因として報告されているのが、「先天性甲状腺機能低下症」と「下垂体前葉機能不全」です。
・先天性甲状腺機能低下症…生まれつき甲状腺の働きが弱く、甲状腺ホルモンが不足する病気
・下垂体前葉機能不全…脳にある「下垂体」に異常が生じ、成長ホルモンが上手く分泌されない病気
治療はホルモン剤の投与などを行いながら、「先天性甲状腺機能低下症」と「下垂体前葉機能不全」など原因となる疾患に対処していきます。ただし、世界的に発症例が少ないため、まだまだ不明なことが多くある病気です。
小猫症と生きる海外の猫「エルフィー」と「ギムリ」
世界中の人々から愛されている「エルフィー」ちゃんと「ギムリ」ちゃんも、小猫症(ドワーフキャット。仲良く寄り添う姿が微笑ましい2匹は生まれつき小猫症を抱えていたため、カナダのアルバータ州にある保護施設に捨てられていたそう。
しかし、この保護施設で小猫症に関する知識を持ちながらボランティアしていた方が2匹に一目惚れ。なんと、里親になってくれたのです!
ギムリちゃんとエルフィーちゃんは小猫症の以外に疾患も抱えており、健康には十分注意しなければならないそう。しかし、同居している犬や猫に囲まれながら、幸せなニャン生を送っています。
身体は小さくてもエネルギッシュな毎日を送る2匹。その光景は、私たちの心に深く刺さります。
小猫症の「うりえる」くん!出会いから保護まで
小猫症の「うりえる」くんは小柄。一般的な子猫は生後10ヶ月の頃、平均体重がおよそ3~5kgですが、うりえるくんは1.2kgだったそう。今回は小猫症という病気を抱えた、うりえるくんとの出会いを飼い主さんにお聞きしました。
ある日の夕方、お子さんと帰宅していた飼い主さんは子猫の鳴き声を耳にしました。そこで付近を捜索するも、姿は見当たらず。やがて声が聞こえなくなったため、帰宅しました。
ところが、夜にベランダで花に水をあげようとしていた時、再び子猫の鳴き声が…。鳴き声を聞いた夕方からは4時間ほども経っていました。
もう一度家を出て、あたりを探しましたが見当たらず…。でも、より一層大きな声で鳴いてくれたので場所が大体特定できました。
そこは、誰も住んでいない寂れた家。塀の内側で鳴いてるのかなと思い、飼い主さんは近くの階段に登って様子を見ることに。しかし、その時、2m半ほどの高さがある家の屋根にいる子猫を発見!
今にも落ちそうなくらい端っこで転がりながら鳴く姿を見て、飼い主さんは急いでレスキュー。近くのポールによじ登り、子猫を家に連れ帰りました。
保護直後のうりえるくん
保護時の体重は、わずか170g。台風の前日で少し肌寒かったため、すぐにタオルを巻いて体を温めました。
夜遅くでも空いている近くのスーパーで粉ミルクを買って飲ませようとしましたが、全く飲みませんでした。
「うりえる」という名前は、初めてうりえるくんを見た時に”ウリボーのような柄”と思ったことから、「ウリエル」という天使から名前を貰い、つけたのだとか。
翌日、飼い主さんは猫用のミルクを貰うため、朝一で動物病院へ。しかし、うりえるくんは自力では飲めず。シリンダーでもあげようともしましたが、うりえるくんは上手に飲めませんでした。
「小猫症」に気づいたきっかけは?
うりえるくんが小猫症であることに気づいたのは、保護後2ヶ月の頃。自分と同じ時期に知人が拾った子猫の写真を見て、成長の様子が違うことに驚きました。
私は子猫と暮らしたことがなかったので、成長するスピードを知りませんでした。保護時は体重も同じくらいだったのに、うりとは全然違って大きかったのです。
生後3ヶ月頃の「うりえる」くん(左)と知人の猫の比較
うりえるくんは自宅で動き回ることはほとんどなく、飼い主さんの隣で一日中寝て過ごしていたそう。週1回、動物病院に通っていましたが、「うりちゃんはちっちゃい子だから…」と言われるのみでした。
そして、飼い主さんはネットで子猫の平均体重を調べてビックリ。ミルクを卒業し、キャットフードを食べられるようになったものの、うりえるくんの体重は生後半年で1kg未満だったからです。
そこで、「小さい猫」をネット検索。その結果、「小猫症」や「ドワーフキャット」という言葉を知りました。
先生に聞くと、「うりちゃんはドワーフキャットだと思います」と言われました。日本では症例はかなり少なかったのですが、エルフィーとギムリという双子のドワーフキャットと同じような大きさだったので、私も確信しました。
小猫症と付き合いながら成長を続ける「うりえるくん」
それでも飼い主さんの温かいケアによって、保護時170gしかなかった体重は順調に増加。
170g から1kgになるまで
うりえるくんは段々、表情が穏やかになっていき、負傷した左目も綺麗に治りました。
やがて、体重は1.2kgに。そこからは、体重の増加も体の成長も止まりました。
うりえるくんのことを周りの人に話すと、返ってくるのは「あまり長く生きられないね」という言葉。しかし、飼い主さんは真逆の考え。「みんながビックリするくらい長生きしてもらおう!」と思っています。
うりえるくんは普段、お子さんに触られたり帽子を被せられても嫌がらず、いつもボッーとしている「ボーちゃん」。しかし、ご飯の時間になると豹変!あげると全て、ペロリとたいらげてしまうのだとか。
時には、なぜか怒りながら食べることも。野良魂を存分に発揮した食事風景は、ユーモアたっぷりです。
食後、うりえるくんは満足気な表情を見せてくれることも。ペロっと舌なめずりをする様子に、胸がキュンとします。
ご飯が好きなうりえるくん、実は獣医師から「満腹中枢に異常があるかもしれない」と言われているため、飼い主さんはご飯の量を調整しながら与えているそう。
骨盤が狭いため、よく便秘になり、舌が短いせいか飲み物が上手く飲めません。だから、シリンダーでこまめに水をあげたり、お薬を毎日飲ませたりしています。
腹筋がないのか、骨盤が狭いのかスムーズにうんちができないので、毎朝お薬と油を飲んでます(`・ω・´)
それがだいすきでガツガツ。
もうないよー? pic.twitter.com/5MB7WRq1ep— うりたん学級 (@uri_0707) February 4, 2016
どうしても便が出ないときは浣腸に連れていくことも。浣腸が苦手なうりえるくんは病院で怒ることもありますが、飼い主さんの細やかなサポートは、うりえるくんが安心して食事タイムを楽しむために大切なものです。
「小猫症」と前向きに生きるうりえるくん
うりえるくんは時々、飼い主さんと一緒に旅行を楽しむこともあります。
以前、飼い主さんは信頼できる友人にうりえるくんのお世話をお願いし、ハワイに旅行したことがありましたが、愛猫のことが心配で旅を心ゆくまで楽しめなかったそう。そこで、当分の間はうりえるくんと一緒に行けない場所は行かないと決め、時折旅を楽しんでいます。
ペット可のホテルが少ないため、行き先は京都など車に乗って日帰りで行けるよう場所。車内でもうりえるくんがおしっこできるように大きなタッパーに猫砂を用意し、お水はシリンダーから飲んでもらっているそう。また、休憩を取りながらトイレをしてもらうようにも配慮しています。
旅行中、うりえるくんは飼い主さんのカバンの中で寝ていることが多いそうですが、時には自然を満喫することも。いちご狩りの時は、取れたてをおすそ分けしました。
なお、ペット可の旅館に泊まった日には、カニになりきってくれたそう。
うりえるくんが見せるお茶目な姿は、見る人を笑顔にします。
うりえるくんに会える「カフェウリエル」をオープン!
うりえるくんへ深い愛を抱いている飼い主さんは日常生活を送る中で、愛猫を家に置いたまま働きに出ることを不安に思うように。そこで、夢だったカフェを大阪の梅田駅近くにオープンしました!
お店の名前は「カフェウリエル」。ロゴは、天使のように癒しを与えてくれるうりえるくんをイメージしながらデザインしたのだとか。
うりえるくんは知らない人に触られると不安になってしまうため、ストレスを溜めさせないよう、猫カフェにはせず、カフェに在中してもらう形にしたそう。うりマスターは猫ベッドの中で眠っていることが多いのだとか。
気になる方は、Xでお店の情報をチェックしてみてください。
なお、うりえるくんを勝手に触ったり、抱っこしたりするのはNG。「優しく見守ってほしい」と、飼い主さんは話します。
毎朝、起きた時にうりが隣で寝ていると、今日も幸せだなあと実感させられます。出会えて、私のところに来てくれて本当に幸せです。
そう語る飼い主さんは、小猫症という病気の認知度が広がることを願ってもいます。
一般的な猫のような生活はできないけれど、この小さな天使の命を他の人にも知っていただけたら嬉しいです。
小猫症というハンデ抱えながらも懸命に生きるうりえるくんの姿から学ぶことは、多いもの。ぜひ、これを機に小猫症という病気を正しく理解し、うりえるくんと飼い主さんの日々を一緒に見守ってみてはいかがでしょうか。