お目目がひとつだけでもこんなにかわいいのに、2つもあったら目力が強すぎて、私はドキドキと興奮で心臓が持たず、長生きできない――。そんな言葉を愛猫しろにゃちゃんに向けるのは、飼い主のかじさん。
しろにゃちゃんは、勤務先だったパン工場で出会った子。一緒に暮らす中では目にメラノーマができ、眼球を摘出。病気を乗り越え、再び穏やかな日常を取り戻しました。
勤務先のパン工場で悲しげな子猫を保護
出会いは、今から14年前の7月。当時、パン工場で勤めていた飼い主さんは夜勤上がりで帰ろうとした深夜3時、従業員用の駐輪場で、しろにゃちゃんを発見しました。
しろにゃちゃんは悲しげな鳴き声をあげながら、足元へ。工場の敷地内は大型トラックが行き交い、事故に遭うのは時間の問題だと思えたため、飼い主さんは保護を決意しました。
あんな場所で、ひとりぼっちで鳴いていた姿を思い出すと、どんなに心細かっただろうかと今でも胸が痛みます。
翌日、動物病院へ行くと、健康面に問題はなく安堵。しろにゃちゃんはお迎え当初から物怖じせず、おうちでの暮らしを楽しんでくれました。
教育係になってくれたのは、先住猫の「さにゃん」ちゃん。子猫のしろにゃちゃんが強く噛みついた時には降参するまで押さえつけ、教育的指導。
さにゃんちゃん
しろにゃちゃんが「ごめんなさい」というような声をあげると、さにゃんちゃんはスッと解放をしていたそう。2匹は日中、仲良くお留守番をし、絆を深めていきました。
右目に突然「シミ」のような模様ができて…
それから時は流れ、6年ほど経った頃、ある異変が。しろにゃちゃんの右目に薄い模様が現れたのです。すぐに動物病院で診てもらうと、シミのようなものだと言われ、経過観察をすることに。
シミはどんどん大きくなっていき、2021年の秋頃、突然、シミが内部で盛り上がったような模様が見られ始めました。
かかりつけ医の紹介で、眼科専門の動物病院で検査をすると、悪性のメラノーマの可能性が高いとの診断が。他の場所に転移する前に眼球を摘出することが望ましいと言われました。
あと5年歳を取っていたら、寿命との兼ね合いもあるため手術は勧めないけれど、健康で比較的若いしろにゃちゃんは眼球の摘出手術を受け、他の場所に転移が見られなければ、まだ長生きできる可能性が高い。
獣医師にそう言われ、飼い主さんは悩んだ挙句、手術を決意。しろにゃちゃんが片目になるという事実を受け入れました。
手術は無事、成功。病理検査の結果、しろにゃちゃんのシミは予想通り、メラノーマ。幸い転移は見られず、獣医師はしろにゃちゃんに「20歳まで頑張ろうな」と声をかけてくれたそう。
術後の様子
術後、しろにゃちゃんは右目がない分、視野が狭くなり、おもちゃで遊ぶ時には右側から急に猫じゃらしが現れると驚いたり、反応できなかったりするように。そこで、飼い主さんは、なるべく左側からおもちゃを見せ、楽しく遊べるように配慮しています。
撫でる時も驚かせないよう、左側から。視界に手が映ってから撫でるようにしています。
とはいえ、日常生活の中で、しろにゃちゃんは自由奔放な姿をたくさん見せてくれています。例えば、おやつの時には袋の音を聞きつけ、一目散に猛ダッシュ!
耳がいいので、どこにいても駆けつけ、さにゃんを押しのけるようにしておやつを食べます(笑)
また、「ちゅ~る」より猫草が大好きなのも、しろにゃちゃんの個性。飼い主さん宅では、ベランダで猫草を栽培。しろにゃちゃんは猫草が食べたくなると、ベランダへ行く窓のそばで大きな声を出し、おねだりをしています。
猫を1000%好きな猫バカの自分がなんだかんだ好き
初めて出会った時から、ずっとかわいい。しろにゃちゃんのことをそう語る飼い主さんには、胸キュンしたエピソードがたくさん。
毎年、冬になるとときめくのが、人間の体温で暖を取る姿。しろにゃちゃんは廊下で大運動会を開催した後、飼い主さんが寝ている布団に入り、冷たくなった鼻や耳、肉球を腕などに押し当て、温めるのだそう。
最高にかわいい。私の腕に押し当てれば温まることを知っているんだと思うと、ヒャっと声をあげたくなるほど冷たい鼻や肉球を温めてあげなきゃ…という使命感に襲われます。
また、入浴時にはお風呂の外で出待ち。飼い主さんが出てくると、顔を見上げ、ピンと立てた尻尾をプルプル震わせながら、足踏みをします。
最初は意味が分かりませんでしたが、行動の意味を知った瞬間、本当にかわいくて、たまらなくなりました。でも、どうしていつもお風呂の後なんだろう(笑)
クールに見えるけれど、気づけばいつもそばにいてくれるしろにゃちゃんは、飼い主さんにとって、かけがえのない家族。愛猫たちへの、「何があってもこの子たちを養っていかなきゃ」という強い想いは飼い主さんの原動力にもなっています。
猫は私にとって、全て。1000%愛しています。癒しでもあるし、愛を注ぐ存在でもあるし、また逆でもある。猫たちは暑苦しくてうざいなと思いながらも、私のことを20%くらいは好きでいてくれる…と信じたいです(笑」
たとえ、片思いだったとしても、それはそれで猫様らしい。そして、そんな猫たちにお仕えしている猫バカな自分自身が、なんだかんだ言って好き。そう話す飼い主さんの、猫を深く愛す“下僕ライフ”は長く続いていきそうです。