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余命宣告を乗り越えて…「先天性門脈体循環シャント」と闘うシャンプーくん

余命宣告を乗り越えて…「先天性門脈体循環シャント」と闘うシャンプーくん

1歳を迎えられるか分からない。長く生きることができても2年―。そんな余命宣告をうけたシャンプーくん(チンチラシルバー)は「先天性門脈体循環シャント」という病気と闘いながら、飼い主のlady__05さんと共に1日1日を大切に生きています。

今年の9月には余命宣告をはねのけ、2歳の誕生日を迎えることができました。

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猫カフェスタッフだったシャンプーくん

シャンプーくんは、もともと大阪にある「猫カフェラグドール」に在籍していた子。成長が遅く、真菌などの病気もあったため、引き取る際、ブリーダーさんから「この子は長くは生きられないかもしれない」と告げられたそう。

お店では目の前にご飯を置いてもにおいすら嗅がず、ウェットフードにも興味をしめしませんでした。

口にフードを入れてみても含んだまま飲み込んでくれず、下痢も見られたため、病院へ連れていくことに。すると、トリコモナスが見つかり、発熱していたことが判明しました。

はじめはそれが原因だと思いましたが、投薬をしても状態が良くならなかったので血液検査をしました。そしたら、アンモニアの数値が異常に高いことが分かって…。

その後、すぐに大きな病院でCT検査したところ、「門脈後大静脈連結」と「多発性嚢胞腎」であると診断されました。

シャンプーくんは当時、生後5ヶ月であったものの、体重は1.1kgほど。成長が遅かったのは、肝臓が機能していない可能性があったからでした。

門脈シャントの可能性もあると言われましたが、シャント血管を見つけるに開腹しなければならなくて…。小さな体に大きな負担がかかるため、見つからなかった場合を考慮し、内科治療をしていくことにしました。

シャンプーくんは、アンモニアの数値を下げるサプリメントを服用するように。しかし、サプリメントはアンモニアの毒素をできにくくするためのもので、根本的な治療にはなりません。症状は改善せず、月の半分はヨダレが止まらなくなり、呼吸が早くなってご飯が食べられなくなったりしていきました。

お店では閉店後にも他の猫たちの運動会に巻き込まれないよう、バックヤードでゆっくり休めるように配慮。しかし、ひとりぼっちは寂しかったようで、出勤したスタッフさんに翌朝、甘えてくることも多かったそう。夜中のうちに体調が悪化して翌朝、ヨダレまみれになっていることもあったため、スタッフさんは泊まり込んでお世話もしていたのだとか。

そんな時、諸事情で他県に引っ越すことが決まったため、飼い主さんはオーナーさんと相談し、シャンプーくんを引き取ることにしました。

「先天性門脈体循環シャント」だと判明

引っ越し先の病院で再度、血液検査をするとアンモニアの数値が異常で、いつ発作が起きて死んでもおかしくないと言われたそう。

長く生きられても2年だとの余命宣告を受け、飼い主さんは深い悲しみにくれました。

なぜ、小さくて罪のない子が、こんな目に合わなければいけないのだろうと思いました。

何かできることはないか。そう考え、飼い主さんは主治医に紹介状を書いてもらい、大学病院でもう一度詳しい検査を受けることに。すると、「先天性門脈体循環シャント」であり、手術が可能な状態であることが判明しました。

先天性門脈体循環シャントは余分にできた血管(シャント)により、肝臓で無害化されるはずのアンモニアなどの毒素が全身にめぐってしまう病気。現在の医学では、根治させることができません。

しかし、飼い主さんは病名を知れたことで、シャンプーくんにしてあげられることがまだまだたくさんあると感じ、たとえ短くても他の子と同じように良いニャン生を歩んでいけるように努力しようと決意。

手術前には、家族でよく話し合いました。手術をすることで、まだ生きられたかもしれないシャンプーのニャン生を終わらせてしまうのではないかと不安にも思って…。

しかし、獣医師から成功率の話などを聞き、シャンプーくんの生命力を信じることに。

手術は無事、成功。少しだけシャント血管を閉めることができたため、肝臓が成長し、体重もやや増加。

しかし、手術は複数回しなければなりません。そこで、飼い主さんは今後の手術に向け、クラウドファンディングにて支援を募りました。

クラウドファンディングに対して否定的な気持ちを持つ方が多いことも知っていたので、すごく悩みました。実際、厳しい言葉を引用リプでいただいたこともあります。

しかし、ほとんどの人は温かく応援してくれ、今まで関わった人たちの優しさに触れることもできたため、飼い主さんはシャンプーくんが多くの人に愛されているという事実を嬉しく思いました。

残念ながら目標金額には届きませんでしたが、再び手術を受けさせるという決心は揺らいでいません。飼い主さんは最後まで、シャンプーくんの命を諦めないつもりです。

この子は我が子同然の存在

病気を持つ猫は、その障害にのみ注目が集まりやすいもの。しかし、シャンプーくんには飼い主さんしか知らないかわいさもたくさんあります。

例えば、小さな頃からとにかく甘やかしてきたため、ご飯は基本的に飼い主さんの手から1粒ずつしか食べないのだそう。

同居猫のジェイドに憧れ、彼を師匠として慕っていますが、部屋に大きな虫が出た時は他猫や飼い主よりも先に立ち向かう勇敢さを持っています。

また、シャンプーくんはカシャカシャと音が鳴るおもちゃやボールで遊ぶのが大好き。

特にボールは数時間転がして遊ぶほどお気に入り。

そんな微笑ましい姿を見続けるため、飼い主さんはおうちで様々な工夫を行っています。

アンモニアの数値が上がらないよう、ご飯は肝臓サポートのもの。嫌がる時はウェット状にします。あと、脱水症状になってしまうことが多いので、行動範囲内に水飲みを複数用意。目に入りやすい場所にトイレを複数個設置し、すぐ行けるようにしています。

自分のお腹から生まれた我が子のような、何にも代えがたい存在―。

シャンプーくんのことを、そう表現する飼い主さんは天寿を全うするまで共に生きていこうと思っています。

余命だと言われていた2歳の誕生日を迎えられて嬉しかったですが、それは言い換えれば、発作が起きて死んでしまう可能性も高くなったということ。だから、今まで以上にシャンプーとの時間を大切にしていこうと思っています。

まだまだ若いシャンプーくんにはこの先も、家族と一緒にたくさんの「楽しい」や「嬉しい」を経験してほしいもの。根治は難しくても、苦しみや辛さが少しでも和らぎ、自分らしい人生を謳歌できる日が来ることを祈りたくなります。