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犬歯が上唇の内側に刺さったサビ猫を保護!警戒心が強かった外猫の”その後”は…?

犬歯が上唇の内側に刺さったサビ猫を保護!警戒心が強かった外猫の”その後”は…?

幼少期から猫と暮らしてきたTTomoecarlさんは1匹のサビ猫と出会ったことで、初めて外の世界で生きてきた大人猫をお迎えすることに。

愛猫ビビちゃんとの出会いは、過酷な世界で生きている外猫の命を改めて考えるきっかけにもなりました。

マンションの敷地内で出会った成猫のサビ猫

地域猫活動が盛んな地域で暮らす飼い主さんはある夜、マンションの廊下で、ひとり佇んでいるサビ猫を発見。その子こそが、後に家族となるビビちゃんです。

日頃から公園で、よく地域猫さんを見かけていましたが、ビビちゃんのことは見たことがありませんでした。

ビビちゃんは初めの頃、人が通ると逃げたり様子を伺ったりしていましたが、やがて、手招きをすると玄関まで来てくれるように。

飼い主さんはやせ細った姿に心を痛め、ご飯を与え、保護を決意しました。

地域猫活動が盛んな地域なので猫好きな方が多く、近所の方もビビちゃんにおやつを与えていましたが、このままご飯を与え続けるのはよくないと思ったので、ケージなどを事前に用意し、捕獲を試みました。

ビビちゃんは人馴れしておらず、触ろうとすると逃走。保護は難航しましたが、ふたりの間には絆のようなものが芽生え始め、やがてビビちゃんは仕事から帰宅する飼い主さんを毎日、夜遅くまで玄関の前で待つようになりました。

鍵につけている鈴の音を聞きつけて、玄関前に現れるようになったんです。

しかし、捕獲は上手くいかず。真夜中に喧嘩する猫の声を耳にしたり、他の猫に追いかけ回されて、ずぶ濡れになりながら雨の中、必死に逃げ回っているビビちゃんを見たりするたび、飼い主さんは早く保護をしなければ…と焦るようになりました。

他猫に追いかけまわされていたビビちゃん(手前)

そんな時、突然、ビビちゃんは姿をみせなくなってしまったのだそう。心配になり、飼い主さんは近所や公園を捜索。

その時、長く地域猫活動をされている方に出会って、サビ猫は見かけたことがないと聞きました。桜耳カットだけれど、ビビちゃんはもともと、この辺りの地域猫ではなかったのだなと思いました。

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犬歯が上唇の内側に刺さった状態で帰宅!

行方不明になってから、3日後の朝。飼い主さんは鈴の音を鳴らせば気づいてくれるかもしれないと思い、実行。しかし、やはりビビちゃんは姿を見せてくれず。

しょんぼりしながら部屋に戻ったものの、ビビちゃんのことが頭から離れず、ふと玄関の覗き穴から外を見ることに。すると、そこにはビビちゃんの姿が!

保護当時

震え、口から舌が飛び出し、よだれも出ていて、かなり辛そうで…。でも、ご飯を食べたそうにしていたので、差し出してみると必死に食べようとしていました。

何としても今、保護するしかない。そう感じた飼い主さんはビビちゃんを家の中に追い込み、旦那さんと協力してなんとか捕獲。すぐに動物病院へ行くと、熱があり、脱水症状になっていることが判明しました。

その時、片側の犬歯が折れていると伝えられましたが、後に、歯は上唇の内側に深く刺さっていたことが分かりました。

上の前歯もなかった

手術が必要であったものの、胃に内容物があって麻酔をかけられなかったため、抗生剤や痛み止めを服用しながら自宅療養し、1週間後に手術をすることに。

自宅療養中、ビビちゃんはお薬を混ぜたご飯をペロリと完食するお利口さんだったよう。

ただ、痛みのせいか、震えが見られ、寝つけなかったり固まって動けなくなったりすることがあったため、飼い主さんは自室を猫部屋に変更し、ビビちゃんがひとりでくつろげるようにしました。

部屋は薄暗くしました。ケージの中で不安な思いをしている分、おいしいおやつやご飯をたくさん用意し、優しく話しかけもしました。

ケージの中で固まっていた

1週間後の手術予定日、予想外の出来事が。改めて口の中を診てもらったところ、穴が少し塞がり、刺さっていた歯は自然に抜けていたため、手術は必要ないと告げられました。

でも、歯肉炎があったり、上前歯が溶けてなくなっていたりと口腔環境が悪いので、お薬は今も飲んでいます。

あなたの味方だと伝え続けた日々

こうして体は元気になったビビちゃんでしたが、家という新しい環境や人間に慣れるまでには時間がかかりました。

人を怖がる様子

保護後はケージにこもり、猫パンチや威嚇。もともと繊細な性格であったようで、飼い主さんが離れると昼夜問わず大声で鳴き、不安になると涙をボロボロ流すことも。

ビビちゃんは部屋の中が静かであると不安が募りやすかったため、飼い主さんは留守中に小さな音でテレビをつけておいたり、リラックス効果があるという猫用の音楽を流したりと工夫したそう。

iPodで音楽を聴くビビちゃん

我が家の窓はすりガラスで窓数も少なく、日当たりが悪いため、iPadで鳥の声や自然の音を聴かせてもいました。外猫時代には屋根の上で寝ていたこともあったので、背が高いタワーも設置しました。

こうした配慮に加え、動物病院で不安緩和に効果が期待できるサプリや抗不安薬を処方してもらったことで、ビビちゃんの不安感は和らいでいったそう。

人馴れ訓練はおもちゃの猫じゃらしで体に触れたり、ケージの隙間から触ったりすることから。

少しずつ人から触られることに慣れていったビビちゃんは喉をゴロゴロ鳴らしてくれ、ケージから出られるように。やがて、背中やお尻を向け、撫でてほしそうな姿を見せてくれるようになりました。

最近では、両足で体を挟むようにし、首周りや背中を撫でると喉を鳴らしながら寝てくれることもあるのだとか。

名前を呼ぶと、お返事やお喋りをしてくれ、顔を差し出すと、私の鼻に自分の鼻をくっつけてくれる。まだ顔の前から触られるのは怖がりますが、ご飯を待っている時にはお尻をピタッとくっつけてくれます。

もっと甘えたいのに甘えられない、もっと近付きたいのに近付けない。そんなビビちゃんの姿を飼い主さんはいじらしい、愛おしいと感じています。

大きな声で夜鳴きをする愛猫を見ると、辛い思いをさせていないだろうか、本当に今、幸せなのだろうかと自問自答し、苦しくなることはある。けれど、外で暮らす危険性のほうが遥かに大きいから、焦らず、これからも家が安全な場所だと伝え続けていきたい。

そう思っている飼い主さんは先日、大きな決断をしました。

実は、ビビちゃんが過ごしやすい物件で暮らしたくて、窓数が多くて日当たりがよく、かかりつけ医に近い中古マンションへの引っ越しを決めたんです。

環境が変わって初めは大変な思いをさせるかもしれないけれど、大好きな日向ぼっこを楽しみ、今よりも広い部屋でゆったりと生活することで、不安症がより改善されたら嬉しい――。

温かいその願いは、きっとビビちゃんの心にも届いているはず。家族になって間もない飼い主さんとビビちゃんが、これからどんな思い出を刻んでいくのか楽しみです。