猫又になるくらい、長生きしてほしい――。そんな願いを抱きつつ、平凡だけれど尊い猫ライフを謳歌している飼い主さんは多いもの。あんこちゃんと暮らすlovebirdさんも、そのひとりです。
愛猫あんこちゃん
あんこちゃんは野良猫時代、左前脚を負傷。切断手術を受けて左前脚を失いましたが、飼い主さんは3本足であることを特別視していません。
干からびたセミを食べて生き延びていた子猫を保護したら…
出会いは、突然。ある日、職場に出勤した飼い主さんは、3日ほど前から荷受け場にいる子猫の保護を同僚から頼まれました。
その子こそが、あんこちゃん。干からびたセミを食べ、必死に命を紡いでいました。
当時、自宅にはすでに11匹もの保護猫がいたものの、飼い主さんはあんこちゃんを放っておけず。仕事帰りにウエットフードを荷受け場に置き、徐々に慣れさせてから捕獲しようと考えました。
3日目、すぐ傍まで来て食べ始めたので、掴んで保護。夜間救急病院に駆け込みました。
保護時、あんこちゃんの左前脚には骨が少し見えるほどの酷い怪我が。レントゲンを撮影すると、足首から骨が折れていることが判明しました。
自転車くらいの重さのものに轢かれたのではないかとのことでした。職場の傍に住宅地はありますが、怪我をした子猫が歩いてくるには距離があるので、なぜ勤務先にいたのかは不明のままです。
ひとまず、夜間動物病院で応急処置をしてもらい、翌日、かかりつけの動物病院へ。すると、院長が腕のいい整形外科を紹介してくれたため、その病院で折れ曲がった足首を元の角度に戻す手術を受けました。
あんこちゃんは、術後1日で退院。飼い主さんは傷口の洗浄をし、処方された塗り薬や飲み薬を投与し、回復をサポートしました。
左前足を肩から切断して3本足に
しかし、ある日、思わぬ事態が。塞がっていない傷口から、大量に出血したのです。感染症の影響で傷口が塞がりきらず、悪化してしまったのです。
このままだと命に危険があるため、肩から断脚したほうがいい。そう言われ、飼い主さんは戸惑いましたが、執刀医から「前脚を1本失っても、猫は変わりなく生活できる」と聞き、手術を受けることにしました。
脚を治してあげることができなくて申し訳なかったけれど、痛みや感染症の不安がなくなるし、家の中で暮らしていく分には困ることはそうないのではないか…と思いました。
術後1日で、あんこちゃんは退院。退院直後は痛みがあったのか、あまり活発ではありませんでしたが、1ヶ月も経つと、これまで通り生活してくれるように。
子猫期にはカーテンレールまで駆け上がり、冷蔵庫や本棚の上などの高所へジャンプした時には前脚1本で飛び降りてくるようになりました。
勢いで高い所へ登って降りられずにウロウロしている時は手を貸しますが、左前脚がなくてできないのは左側の顔を洗うこととトイレの砂掻きくらいです。
なお、トイレ後には、なくなった左前脚でエアーカキカキするそう。
あんこちゃんの中ではまだ、自身の左前脚は存在しているのです。
「可哀想」ではなく「かわいい」の声が降り注ぐニャン生
あんこの脚が3本なのを気にしたことはないし、他の四本脚の猫と何も変わりません。
そう語る飼い主さんは、あんこちゃんを“ハンデのある猫”だとは思っていません。
あんこに直接、話を聞けたら色々と苦情を言われるかもしれませんが、人間が勝手に可哀想と決めつけて変な同情をすることのほうが、失礼なのだと思いました。不自由なことは何ひとつないのだから。
痛みから解放され、自由に動けるようになったあんこちゃんは、自宅で3歳離れたサビ姉妹と、よく3匹でくっついてお昼寝タイムを満喫しているそう。
また、飼い主さんの側でゴロゴロして構ってほしがり、膝を占拠することもあります。
あんこは顔が、すごくかわいい。目が大きくて鼻が小さく、少女漫画のキャラクターのみたい。手や腕を舐められるのは結構痛いので、やめてほしいですが(笑)
この子は、自分にとって最後の保護猫――。そう話す飼い主さんのもとで、あんこちゃんはこの先もずっと、3食昼寝付きの生活を謳歌する予定。好奇心旺盛の構ってちゃんな愛猫に、今日も飼い主さんは翻弄させられ、幸せな時を刻んでいます。