企画

リアルな肖像猫を額縁へ…羊毛作家が生み出すオーダーメイド作品「わくねこ」

羊毛フェルトでリアルな猫作品を生み出す作家さんはたくさんいますが、「わくねこ羊毛フェルト」として活躍しているSachiさんの羊毛作品は一風変わっているよう。

羊毛フェルトで作った猫を額縁に入れたこの肖像猫は「わくねこ」と呼ばれ、多くの猫好きさんから愛されています。

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飼い主さんの協力を得て確立された「わくねこ」

Sachiさんが羊毛フェルトを知ったのは、2015年春のこと。3匹の保護猫をこよなく愛しながら生活していたため、瞬時に「猫を作りたい!」と思いました。

初めは一般的な猫のマスコットを作ってみましたが、顔の制作が楽しかったので、フレームにおさめた、証明写真のような胸像を作り始めました。「わくねこ」は「枠猫」という意味です。

今のような作風は、広告のイラストレーションを手がけ、多くの人物画を描いてきたSachiさんの経験と、ある飼い主さんとの出会いによって確立しました。

羊毛フェルトで猫を作り始めてしばらく経った頃、Sachiさんはブログに、「いつかもっと上手くなったら誰かの猫ちゃんをモデルにオーダー制作をしてみたい」と投稿。すると、ある飼い主さんから「ぜひ、オーダーを始めてください」とメッセージが届き、愛猫テオちゃんを製作させてもらえることに。

当時、Sachiさんは数種類のフレームと様々な布の中から好きな色を選んでもらうオーダースタイルにしようと考えていました。

その時、テオちゃんの飼い主さんがセレクトしてくれたのが、マホガニー色のフレームに赤い布という組み合わせでした。以来、ずっとその組み合わせで作品作りをしています。

今思うと、テオちゃんの飼い主さんによって「わくねこ」は完成したのかもしれない。そう語るSachiさんにとって、テオちゃんは忘れられないキッカケを与えてくれた作品になっています。

リアルさの追求よりも「いい顔」を作りたい

2016年よりオーダー製作を主軸にし、心惹かれる作品を多数生み出し続けているSachiさん。そんなベテラン作家さんでも難しいと感じるのは、猫の目なのだそう。

どのお店に行ってもイメージに合うものに出会えなかったため、自ら猫の目を作るようになりました。

前職がイラストレーターだったので、色彩や塗料には知識がありました。作家さんによって作り方は様々だと思いますが、私の場合は絵の具を薄く何層にも重ねることで、色に深みを出していく手法を追求しています。

透き通るような瞳の裏に努力と工夫が詰め込まれているからこそ、「わくねこ」は命が宿っているかのような印象を与えるのです。

しかし、Sachiさん自身は自分が生み出す目にまだ満足していないよう。

写真とそっくりに作ったとしても、それだけでは活き活きとした表情になりません。私自身、まだ答えが見いだせておらず、ひょっとしたら一生完成しないパーツが目なのかもしれません。それだけ奥が深いです。

その手から生み出される作品は、どれもとてもリアル。けれど、Sachiさんが心がけているのはたったひとつ、「いい顔を作ること」だけ。

モデルとなる猫がいるからこそ、製作が作業にならないよう、心を込めながら年に2~3個の作品を飼い主さんに届けています。

たとえば、ネットの画像などを参考にして自分の作りたいように製作したものであれば、「かわいい猫の作品」となりますが、飼い主さんに届ける猫は「世界一かわいいうちの猫」になる。これはオーダー制作ならではの魅力であり、私ひとりの力では成せぬものです。

自分の手から生まれた作品が、誰かにとっての宝物になる喜びと重み。それを噛みしめながら、Sachiさんは肖像猫たちに命を吹き込み続けています。

YouTubeで650万回再生された「わくねこ」製作の裏側

そんなSachiさんは、「わくねこ」の製作過程をYouTubeでも配信中。

こちらの動画には、2018年に制作した過去作品も登場。その飼い主さん宅で同居猫ちゃんが亡くなったため、Sachiさんはその子も作品にし、2匹が隣同士に並んだ時に見え方が揃うようにもしました。

動画制作を担当しているのは、ビデオグラファーのギュイーントクガワさん。

SachiさんはYouTubeで何かを配信したいと思い、5年前にチャンネルを開設。本で動画制作を学び、とりあえず羊毛フェルト猫を配信していたものの、動画の作り方がよく分からず悪戦苦闘。

そんな時、YouTubeで「動画の作り方」を検索し、動画塾を配信するギュイーントクガワさんを知りました。

普段は講師をされているのかと勘違いし、「習うためにはどうすればよいでしょうか?」とメールしたら、「ちなみにどんな動画を作りたいんですか?」と返信があり、当時まだ3本しかアップしていなかった私の動画を見てくださいました

すると、ギュイーントクガワさんから「わくねこすごい!!ぜひ俺に撮らせてほしい!」と熱烈なオファーが。この出会いを機に「わくねこ」は、さらに多くの人の目に留まることになったのです。

いつか、作品展を開催することが目標。画像でもなく、動画でもなく、実物をお披露目できる機会を作りたいです。

今後の夢を、そう語るSachiさんは画家になることを夢見ていた20代の頃や、写真家に憧れた30代の自分を振り返りつつ、今日も一針入魂。

あの頃、10年後の自分は必ず夢を叶えていると思っていましたが、画家にも写真家にもなっていません。つくづく、人生は何が起こるかわからないと痛感します。今の私は10年後も猫を作っているのだろうと想像していますが、それと同時に、これが最後の作品になっても後悔しないかと問い続けながら制作しています。

作り手に熱い想いと猫愛があるからこそ、「わくねこ」は多くの人の心に焼き付くのかもしれません。