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この病気を伝えることには意味がある!骨形成不全症と闘う黒猫の玄くん

この病気を伝えることには意味がある!骨形成不全症と闘う黒猫の玄くん

何度も骨折を繰り返してしまう「骨形成不全症」は、現在の医学では完治が難しい難病。以前、ねこナビでは骨形成不全症の疑いがあると診断されたチャッピーくんのニャン生を紹介しましたが、同じ病気と向き合っている子は他にもいます。

そのひとりが、meiさん宅で暮らす玄くん。

玄くんは1年前の秋に、骨形成不全症である可能性が高いことが判明。病気と付き合いながら、今を生きています。

保護した母猫から生まれた子猫は「骨形成不全症」

meiさんは2020年の夏、怪我を負っていた1匹のメス猫を保護。病院へ連れて行くと妊娠していることが判明し、保護から1週間後に玄くんたち姉弟が誕生しました。

しかし、動き回れるようになってきた生後2ヶ月頃、もともと四肢奇形と下顎短小変形を持って生まれてきた玄くんは姉たちや母猫と触れ合う中で骨折することが多くなったため、meiさんはかかりつけ医に相談。

最初は血液検査とレントゲンで異常を確認し、骨折している箇所をその都度治療していました。しかし、月日が経つにつれ、骨折する頻度が増え、やがて数日おきに骨折するように…。ただごとではないと感じたmeiさんは、獣医師と共に情報を集め始めました。

そんな時、知ったのがチャッピーくんの症状や海外から発信された骨形成不全症の情報。得た情報をもとにmeiさんは獣医師に骨形成不全症ではないかと相談。治療法を見直すことになりました。

症例がごく少数であるため、先生は当初、猫の骨形成不全症の事例を知らず、軟骨異形成症を疑っておられたようです。とてもいい先生で情報をお伝えしてからすぐ骨形成不全症について勉強され、トントン拍子で検査と診断が行われました。

血液検査の結果、ホルモン異常が認められ、軟骨異形成症や低カルシウム血症ではないことが明らかに。アメリカの検査機関に依頼した検査でも未確認の症例であるとの回答が得られ、レントゲン撮影によって骨密度の異常な低さと骨の脆さが指摘されたため、骨形成不全症であろうと診断が下されました。

ただし、猫の骨形成不全症は症例が少ないため、現在の獣医学では確定診断できず、あくまでも「それらしい疑い」という扱い。症例には個体差があるため、獣医師と要相談し、治療法を決めていかねばなりません。

玄くんの場合は、骨折が重度な箇所は手術をして保定。2週間から1ヶ月ごとにレントゲンで骨密度の確認をし、ビタミン剤や骨粗しょう症の治療に使われることもあるビスホスホネート剤を服用することになりました。

そうした治療が功を奏したのか、玄くんの症状は落ち着き、骨折の頻度は激減。

今は毎月、レントゲンで骨密度と骨折の有無確認をし、毎日ビスホスホネート剤を服用しています。

調子がいいため、レントゲンの定期健診は今後3ヶ月ごとになる予定。適切な情報が得られ、寝たきりの状態からほぼ健康体と言えるまでに症状が改善したことにmeiさんは喜びを嚙みしめています。

うちの子がマイペースに生活を楽しめる工夫を

meiさんは玄くんの体に負担がかからないよう、普段の暮らしの中で様々な工夫もしています。

例えば、骨折を防ぐため、行動範囲は1部屋に絞り、走ってもあまり速度が出ないよう、家具を配置。クッションフロアや厚い絨毯を敷き、移動時や転倒時の衝撃を和らげてもいます。

骨折を繰り返していた頃は布ケージで過ごしてもらっていた

私が家にいる時に玄がどこかから降りようとする際は、抱えて降ろします。段差は極力減らし、最大でも50cm以内に収め、階段状にして登りやすくしています。不安定で転げ落ちる可能性がある猫ベッドは部屋に置きません。あと、引っ掛かり防止のため、爪切りはこまめにしています。

猫用トイレは、入口が低い商品をチョイス。粒が細かい猫砂を入れ、足がひっかかったり、滑ったりしないようにしています。

とことん配慮された環境の中で、玄くんはマイペースで甘えん坊な性格を披露。

障害物がある時には鳴いて知らせ、家族に撤去してもらったり、不機嫌な時は手からしかカリカリを食べないというわんぱくっぷりを見せたりするのだとか。

生まれた時から世話を焼かれてきたため、自分のために周りが動いて当たり前だと思っているフシがあります(笑)寂しがり屋で母猫や私が部屋にいないと大騒ぎをして探し回るので、長時間家を空けられず、外出や買い物を諦めることもしばしばです。

また、玄くんは甘えたい時や寝ぼけた時にはよくmeiさんの指を吸ったりかじったりしてくるのだとか。
こうした行動が見られるのは、奇形により下顎が短く、母猫のお乳や哺乳瓶を吸うことができなかった玄くんを思い、meiさんが指にミルクを浸して舐めさせていたから。

離乳食に移行した際には顎のリハビリとして指をかじらせていました。今ではしっかり咬合力がついて、かなり痛いのですが、いつまで経っても赤ちゃんだなと微笑ましく思っています。

おうちでは、母猫と思いっきりいちゃいちゃすることも。

赤ちゃんの頃に吸えなかったため未練があるのか、大きくなった今、母猫のお乳をしつこく吸おうとしては頭をはたかれている。そんなマザコンっぷりも愛らしいです。

2匹はお互いのことが大好き。四六時中くっつき、時折mieさんに寂しい思いをさせながら、親子愛を深めています。

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症例の少ない病気だからこそ、発信することに意味がある

骨形成不全症はこの先ずっと付き合っていかなくてはならないのに、症例の少なさゆえに情報が少ない病気。だからこそ、玄の病状を発信することには意味があると思っています。

mieさんはそう考え、我が子の骨折に悩む誰かのために、骨形成不全症という病気の周知に力を注ぎ続けています。

私たちはチャッピーくんの飼い主さんが骨形成不全症の情報を発信してくださったからこそ、服薬を開始でき、玄は走り回ることができるようになりました。症例が少ない病気だからこそ、私たち飼い主は情報を絶えず発信し続け、協力し、励まし合う必要があると考えています。

大切な愛猫が原因不明の痛みと苦しみに喘いでいる中、診断も治療法も不明で不安が募っていく苦しみを経験したからこそ、meiさんは頼れる仲間がいることの心強さを痛感。

以前、別の取材を受けた時、骨折を繰り返していた子猫の保護主様からご連絡をいただいき、連絡を取り合う中で、その子も骨形成不全症であろうと診断が下り、服薬と治療に励んだ結果、寝たきりから自力で食事ができるまでに回復しました。私たちのこうした経験が、同じ病気で苦しむ飼い主さんにとってどれだけの希望となるかは想像にかたくありません。

うちの子の治療経過が骨形成不全症を知るきっかけや、治療への道筋に繋がれば嬉しい――。そう語るmeiさんは骨形成不全症に限らず、愛猫の様子に違和感を覚えたら、こまめに病院へ行き、病気の早期発見に努めてほしいと願っています。

どんな病気も重症化してからでは治療法が限られてしまうもの。早めの行動と判断が、結果として我が子を救います。お金が心配な場合も、まずは獣医師さんに相談してみてください。無理のないプランや診察方法を考えてくれることもあります。

また、世の中には骨形成不全症のようにまだ広く知られていない病気もあるからこそ、セカンドオピニオンやサードオピニオンの選択肢も持ち、愛猫の病気と向き合うことが大切。

1匹1匹の通院歴や1例では取るに足らない症例の積み重ねが獣医学発展の礎となり、いつか未来で誰かの我が子を救います。

原因不明の病気を前に苦しんでいる飼い主さんと猫ちゃんの負担を少しでも減らすため、meiさんはこれからも玄くんとの日々を発信し続けていきます。その尊い記録がより多くの人に届き、命が紡がれるきっかけになることを心から願いたいものです。