令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップなどで販売されている犬・猫を対象に装着が義務化された、マイクロチップ。その情報をもとに、悲しい遺棄の経緯が明らかになったのは、ぽんちゃんさん宅で暮らす、クッキーちゃん。
クッキーちゃんはクリスマスプレゼントとして購入された後、大切にしてもらえず、公園に遺棄されてしまいました。
痩せこけて衰弱していた子猫を保護
飼い主さんとの出会いは、冬の寒い日。外出先から戻った飼い主さんは、自宅前に停めていたバイクの下に子猫がいることに気づきました。
その年の夏、飼い主さんは車の下で息絶えている子猫に遭遇したことがあったため、同じ状況だと思い、一度自宅へ入り、弔うための箱を準備。子猫を、そっとバイクの下から出そうとしました。
しかし、触れた瞬間、子猫はわずかに動いたそう。生きていることに気づいた飼い主さんはすぐ、動物病院へ向かいました。
保護が成功したのは我が家の猫たちが、おうちにおいでと呼んでくれ、必死にたどりついてくれたのか、虹の橋の子たちが案内してくれたのかなと、今も家族と話しています。
子猫時代
子猫は痩せこけ、汚れ、ボロボロの状態。脱水や栄養失調がみられ、衰弱していました。
どうするか先生に確認されたので、飼い主がいなければ私が保護すると伝え、即入院となりました。
その後、子猫にマイクロチップが埋め込まれていることが判明。獣医師は、元飼い主に連絡をしました。
すると、元飼い主は「いらないから捨てたので、うちの猫じゃない」と引き取りを拒否。遺棄の経緯も明らかになりました。
マイクロチップから元飼い主が判明!
元飼い主が子猫を迎えたのは、クリスマスの時期。お孫さんとペットショップに行った際、子猫がかわいく見え、店員から「チャンピオンの子なので上品で大人しい。懐きやすく、飼いやすい猫種です」と勧められそう。
子猫期のクッキーちゃん
お孫さんが子猫を欲しがったため、元飼い主はクリスマスプレゼントにしようと購入。しかし、連れ帰ると、子猫は環境の変化に戸惑ったようで、部屋の隅で隠れんぼ。逃げたり抱っこを嫌がったりしたうえ、お孫さんに猫アレルギーの症状が出てきてしまったそう。それにより、息子さん夫婦から責められるようになった元飼い主は、子猫を公園に遺棄したのです。
懐かないし、かわいくない。アレルギーを引き起こす厄介な存在である猫を抱えたまま年を越したくないので、2週間足らずで遺棄したとのことでした。
元飼い主は連絡した獣医師に「いらないから、欲しい人がいるならあげる。いちいち連絡してくるな」と逆切れ。また、会話をする中で、子猫と共に、もう1匹の猫をセット購入しており、2匹を一緒に捨てていたことも分かりました。
セット購入されたチョコちゃん
あまりにひどい話を受け、普段は温厚な獣医師も激怒。「あなたに動物と暮らす資格はない!ペットショップにいた子、ましてや子猫を外に放すのは殺すのと同じことだと分かりませんか」と伝えましたが、元飼い主には、その怒りの重みが通じず。
連絡されて迷惑だ。もう関係ないのに言いがかりをつけられて、こっちもうんざりだと電話を切られていました。あんなに怒った先生を見たのは、初めてでした。
細やかな配慮によって甘えん坊の猫に成長
悲しい過去を抱えた子猫はその後、「クッキー」という名前を貰い、正式に飼い主さん宅の子に。病院のスタッフさんたちが手厚く看病してくれたため、徐々に人慣れはしてくれたものの、自宅に連れ帰った時は怯えた様子でした。
特に怖がったのは、子どもの声や大きな音。人が近づくと、身をすくめる姿も見られたため、しばらくは静かな部屋に設置したケージの中で過ごしてもらうことにしました。
その後は小さい部屋へ…というように、段階を踏んで慣らしていきました。クッキーの取りたい距離を守っておもちゃで遊んだり、一緒の部屋で過ごしたりして、近づきたいと思ってくれるのを待ちました。
また、クッキーちゃんは外猫生活中に飢えた日々が辛かったようで、ご飯の時は同居猫たちに取られないように威嚇をしながら食べていたそう。
だから、毎日ごはんが食べられると思ってくれるまでは、たくさんあげるようにしました。
こうした細やかな配慮もあり、クッキーちゃんは徐々に心を開いてくれたよう。今では、「ククッ」と小さい声を出しながら頭を擦り付け、甘えてくれることもあります。
私はリモートワークなので、パソコンの横にはいつも、へそ天で眠るクッキーがいて眼福です。
セット購入されたチョコちゃんの保護にも成功
現在、飼い主さん宅には20匹以上の保護猫が生活中。多頭飼いでも、それぞれの猫が快適に暮らせるよう、猫たちが暮らすスペースは性格ごとにエリア分けをしています。
どうしても性格が合わない子たちが顔を合わせないようにしています。あと、隠れ場所やキャットタワーも各所に設置。それぞれがお気に入りの場所でのんびり過ごせるようにしています。
賑やかな生活の中で、クッキーちゃんは後輩にゃんこへスパルタ教育を行うように。
クッキー、わらびを教育中。
手加減しっかりに優しさを感じる🥰#猫好きさんとつながりたい #スコティッシュフォールド #ノルウェージャンフォレストキャット pic.twitter.com/TU12QOlQzl— ぽんちゃん (@pocannyano) September 17, 2021
見た目はゆるふわ系の美少女ですが、大暴れする子にはお腹を押さえ、往復ビンタ。暴れたらだめでしょ!と注意しています(笑)
なお、自宅で暮らす保護猫の中には、クッキーちゃんの元飼い主がペットショップでセット購入した猫のチョコちゃんもいます。
クッキーちゃんとチョコちゃんが遺棄されたのは、飼い主さん宅の近くにある大きな公園。そこには、餌やりさんが定期的に来ており、大きい猫たちに阻まれ、ご飯を十分に食べることができていないクッキーちゃんの様子も何度か目撃していたよう。
保護時、チョコちゃんは1歳近くでクッキーちゃんよりは大きかったものの、全身傷だらけ。
2歳の誕生日の時
大人猫には未だに時々、委縮し、自分より若い猫たちとよくいます。我が家では穏やかな性格の後輩たちに世話を焼き、お姉さんぶりを発揮しているんです。
贈り物として扱われた、2つの命。その重みを知る飼い主さんは、身勝手な理由による遺棄に憤りを感じています。
連れ帰ったら思っていたのと違っていたなんて勝手な都合でしかないです。成長を見守ることができないなら、子猫と一緒に暮らす資格はないですし、本当にお孫さんのことを想うのなら、アレルギーの有無もちゃんと考えてあげるべきだったと思います。
元飼い主に、そんな言葉を向ける飼い主さんは、「生き物をプレゼントにしていいことなんて決してない」と、クッキーちゃんたちが経験した悲しい遺棄に心を痛めます。
保護猫文化が浸透しつつあるとはいえ、いまだにクリスマスや正月などのイベント時には「セール」という悲しい言葉と共に動物の命が並ぶのが、動物後進国である日本の現状。クッキーちゃんたちのニャン生を通して、小さくも尊い命の重みを痛感し、安易に命を贈りものとして扱わない人が増えてほしいものです。