血管の細胞ががん化した「血管肉腫」は、猫では稀な病気。当事者の話も少なく、医師も予後を判断するのが難しいため、愛猫が血管肉腫になると飼い主さんは絶望的な気持ちになるものです。
そんな中、希望をもたらしてくれるのが沼田さんの愛猫・ねこ氏くんの闘病体験。
ねこ氏くんは2022年に血管肉腫と診断されたものの、病気と上手く付き合いながら17年のニャン生を謳歌しました。
河川敷で暮らす地域猫に一目惚れ
ねこ氏くんはもともと、河川敷で複数の猫たちと暮らしていた地域猫でした。ご飯は他の猫たちと一緒に、河川敷の近くで暮らすおじさんから貰っていたそう。
飼い主さんと出会ったのは、2007年のこと。おっとりとした性格のねこ氏くんは猫同士の喧嘩で負けたり、放し飼いの犬に追いかけられたりしていることがありました。
地域猫の頃
飼い主さんは、そんなねこ氏くんに一目惚れ。1年ほど河川敷に通い、ご飯をあげているおじさんに相談し、譲渡してもらいました。
家猫になると、ねこ氏くんはとにかく飼い主さんと一緒にいたがる甘えん坊にゃんこに。帰宅後のお出迎えはもちろん、入浴中はバスマットの上で出待ち。就寝時には飼い主さんの顔に乗って眠ることも多かったそうです。
しかし、2022年の1月、穏やかな日常は一変。きっかけは、15歳になったねこ氏くんの片耳に2mmくらいの赤黒いできものができたこと。心配になり、動物病院へ行くと、悪性腫瘍の可能性が高いとの診断が…。
すぐに検査をしましたが、結果が出るまでにできものが大きくなり、掻き壊して何度か大量出血。止血剤でも、なかなか血は止まりませんでした。
愛猫が「血管肉腫」に…片耳の切除手術を受けるも再発
ようやく出た検査結果で、耳の腫瘍は血管肉腫であることが判明。血管肉腫は犬の場合、転移することも多い病気です。
片耳にできた血管肉腫
飼い主さんは獣医師から、手術をしても再発する可能性があることを告げられましたが、出血多量を繰り返していたため、手術を決断。検査結果が出た翌週、ねこ氏くんは片耳の切除手術を受けました。
術後、片耳がなくなったことを気にする素振りはあまりなかったそう
しかし、病魔はまたもや、ねこ氏くんと飼い主さんを苦しめます。手術から2週間後、もう片耳にも赤黒いできものが…。病院で検査を受けると、血管肉腫の再発であることが分かりました。
獣医師は、抗がん剤治療という選択肢もあると提案。ただ、抗がん剤治療を選んでも選ばなくても、どちらも間違いではないとの優しい言葉もくれたそう。
ねこ氏くんにとって1番よい方法を選ばなくては…と、切羽詰まっていた飼い主さんは獣医師の温かい言葉に救われ、悩んだ末に抗がん剤治療を受けないという選択を下しました。
15歳と高齢なことや治療の副作用、病院へ来るたびに不安から待合室で鳴き続けるねこ氏の性格、与えるストレスを考えた結果です。
病気の再発から2年間も一緒に過ごせた
血管肉腫の予後は犬の場合、あまりよくないことが多いため、獣医師からは「生存率は、あまり高くない」との厳しい現実を突きつけられました。
なるべくストレスをかけず、できる限りのケアをしたい。そう思い、飼い主さんは3ヶ月に1回、定期検診を受けさせ、腫瘍の状態を確認するように。
悲しんでばかりいると愛猫もなんとなく元気がなくなってしまう気がしたので、なるだけ穏やかに過ごすことも意識しました。
心はずっと落ち着きませんでしたが、ねこ氏くんの生命力は強く、嬉しい奇跡が。なんと、再発した片耳の腫瘍はその後も大きくなりませんでした。
ただ、やがて腎臓が悪くなりました。1年間、腎臓治療の点滴をしに多い時は週に2回病院を受診。月1回、血液検査を受けていました。
こうしたケアを受けたねこ氏くんは病気の再発から、なんと2年間も生きてくれ、腎臓病により17歳でお空へ旅立ちました。
稀なケースなのかもしれませんが、血管肉腫は再発しても進行しないこともあるのだと感じました。
飼い主さんのその言葉は、同じ病気と闘う猫やその家族にとって希望となるもの。大切な家族として、最期まで愛されたねこ氏くん。そのニャン生が多くの猫飼いさんに届きますように。