保護猫カフェという場所があったからこそ、誕生した家族がある…。2021年2月10日(水)に発刊された、漫画家・蘭木流子さんの新作『いっしょに帰ろう 保護猫カフェで出会った新しい家族の話』は、そんな思いで胸がいっぱいになる作品。
本作には猫が触れないと思っていた人や、ひとり暮らしで猫を飼うことを諦めかけていた人、愛猫の死を乗り越えた人など、保護猫カフェで様々な出会いを果たした人のエピソード漫画が収録されています。
蘭木流子さんといえば、「ヒコーキ漫画家」として有名ですが、実は大の猫好きさんでもあるよう。本作の監修を務めている「保護猫カフェ駒猫」に通い始めたのは、今から2年ほど前のことでした。
長年、生活を共にした愛猫を看取り、ペットロスだった頃、「新しい猫を迎えるほど気持ちは切り替えられないけど、猫と触れ合いたい…」と思い、近くの猫カフェを探していた時にネットで見つけました。
それまで蘭木さんは「動物愛護」という言葉や保護活動をしている人に対して、厳しそう…というイメージを持っていましたが、お店に通い、店長さんの想いに触れるうちに、それが偏見であったことに気づきました。
保護猫を迎えるには条件や審査が厳しいイメージがあり、迎えるハードルが高いと思っていました。でも、保護猫カフェはいきなり審査される…と身構えることなく触れ合えるし、行くだけで保護猫支援になることを知ったので、それを広めたいと思いました。
作品を制作する中で一番意識したのは、「保護猫を迎えるべきだ」という考えを押し付けないこと。作中で、変化していった自身の動物愛護観を伝え、ペットショップやブリーダーさんから猫を迎えた方でも読みやすく、猫を愛するすべての人が「保護猫カフェっていいな、行ってみようかな」と思える漫画になるよう、こだわりました。
また、保護猫カフェのシステムなどを学べるコラムも収録。初めての方にも足を運びやすいと思ってもらえるように工夫しました。
そんな蘭木さんにとって特に思い入れ深い作品となったのは、初めて猫を迎えるキクチ夫妻のエピソード。このエピソード漫画は、キクチさんのnoteをもとに生まれた作品です。
大きな事件は起こりませんが、迎えるまでの葛藤や奮闘が丁寧な心理描写と共に記録されていて心を動かされ、ぜひ漫画化したいと思いました。保護猫カフェだからこそ生まれた、心温まるエピソードだと思います。
また、本作には猫の命を見守り続ける人たちの心理も丁寧に描かれており、改めて命の尊さや終生飼育の大切さを痛感されられました。中でも、ウルっときたのが、蘭木さんが保護猫カフェ駒猫から2匹の保護猫を迎えた時の話。そこに描かれていたミルクボランティアさんの手紙は、涙なしには読めません。
猫を愛する人たちの様々な祈りが詰め込まれた、保護猫カフェという場所…。その魅力を余すことなく伝えている本作は、温かい涙がこぼれる感涙本です。
なお、蘭木さんは、突然「保護猫」というジャンルに挑戦した自分を暖かく見守ってくれたファンの方に、深い感謝を寄せています。
私は旅客機愛好家の漫画家として8年ほど活動しておりますので、読者様やフォロワー様はほとんどがヒコーキファンの方かと思いますが、猫漫画に対しても「いいね」などの反応をいただけることがあり、本当に嬉しく励みになっています。本作の制作を応援してくださった保護猫カフェの常連様や里親様、愛猫家の皆様にも心より感謝申し上げます。
大切に育ててきた我が子を託す店長さんの思いや猫との出会いで救われた里親さんの幸せ、蘭木さんの保護猫カフェへの愛が詰め込まれた本作は、猫好きの心を揺さぶる一冊。保護猫カフェという、命を紡ぐ場所を知るきっかけとして、ぜひ手に取ってみてください。