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愛猫の目に茶色いシミ…診断は「虹彩メラノーマ」 眼球摘出を選んだ飼い主の“決断”と“その後の日常”

愛猫の目に茶色いシミ…診断は「虹彩メラノーマ」 眼球摘出を選んだ飼い主の“決断”と“その後の日常”

愛猫の目に突然、茶色いシミができたことに気づいたら、すぐ動物病院へ相談に行ってほしい。そう伝えるのは、2匹の愛猫と暮らすotabbysさん。

シンバくん(左)とライムくん

愛猫のライムくんは1才8ヶ月の頃、右目に突然、茶色のシミが…。覚悟を持って挑んだ眼球摘出手術の結果、そのシミは「虹彩メラノーマ」という悪性腫瘍であったことが判明した。

保護猫カフェから2匹の“仲良し猫”を迎えた

2019年、飼い主さんは保護猫カフェから、ライムくんとシンバくんを迎えた。当時、ライムくんは推定6ヶ月。1ヶ月ほどしか誕生日が変わらないシンバくんとは、兄弟のように仲がよかった。

お迎え当初、ライムくんは環境の変化に戸惑い、カーテン裏に引きこもったことも。初めて頭をすりつけ、「撫でて」とアピールしてきた時、飼い主さんは言葉にできない嬉しさを感じたという。

膝乗りは好きだけど、抱っこは苦手

ライムは、甘えん坊で臆病。来客時には押入れに隠れますが、1〜2時間ほど経つと、お客さんの前へ。葛藤の末、出てきたんだなと毎回、愛おしい気持ちになります(笑)



愛猫の目に突然“茶色いシミ”ができて…

異変に気づいたのは、ライムくんが1歳8ヶ月になった、2021年4月。右目の中に突然、茶色のシミが現れたのだ。

目に違和感がある素振りは見せておらず、体調にも異変はなかったが、心配になり、かかりつけの動物病院へ。眼科専門の獣医師がいる動物病院を紹介してもらった。

検査の結果、機能的な異常はなかった。だが、獣医師からは「虹彩メラノーシス」か「虹彩メラノーマか」のどちらかであると告げられる。

目のシミに気づいてから3ヶ月後くらい

虹彩メラノーシスは、虹彩に色素が沈着した状態のこと。シミが広がる速度は数年単位と遅く、危険性は低いと言われている。

だが、虹彩メラノーマは悪性腫瘍。虹彩メラノーシスとは異なり、シミは数日から数ヶ月ほどで広がり、目以外の臓器にガンが転移する可能性もある。

できるだけ両目を残してあげたい。飼い主さんと獣医師はそう考えた。ライムくんはひとまず2ヶ月に一度通院し、経過観察をすることになる。

自宅では、2週間に1回ほどの頻度で目の状態を撮影。シミの広がり方をチェックするのが習慣になった。

愛猫の眼球摘出手術を決意! 「虹彩メラノーマ」と断定できた

半年ほど経った頃、右目にあるシミは増え、色も濃くなってきた。

事前に獣医師から丁寧な説明を受けていた飼い主さんは早期治療の大切さを痛感していたため、2021年12月、眼球摘出手術を決断する。

虹彩メラノーシスだったら、少しシミがあるだけの正常な目を摘出することになるので心苦しかったですが、まだ2才のライムにはおいしいものや楽しいおもちゃ、心地よい寝床など、これからも色んなお気に入りに出会ってもらいたいと思って…。

手術前には同居猫のシンバくんに、「ライムが左目だけになって難しいことが出てきたら、私たちがライムの右目になろうね」と話しかけたという。

覚悟を決めた手術により、目のシミは初期の「虹彩メラノーマ」であることが判明。一般的に、虹彩メラノーマの早期治療は難しいと言われているが、ライムくんは異変の早期発見や専門医との迅速な繋がりのおかげで、早期治療が叶ったのだ。

たとえ虹彩メラノーシスであったとしても、手術を決断したことへの後悔はありませんでした。そう思えるくらい、対話をしながら丁寧に経過観察してくれた先生に出会えて幸運だったし、感謝しています。

術後に行った愛あるサポートと片目になったライムくんの“現在”

術後は傷跡を舐められないよう、シンバくんとは別の部屋で過ごさせた。だが、ひとりきりになったからか、ライムくんは元気がなく、体重も減少。

エリザベスカラーをつけての生活に苦戦している様子を見た飼い主さんは少しでもストレス緩和になればと思い、タオルをお湯で濡らして、毛づくろいできない体を拭いた。心細さからか、膝上から降りないライムくんを気遣い、時間が許す限り、膝を貸し、体を撫でもしたという。

仲良しのシンバくんも、ライムくんに寄り添いたがった。そこで、飼い主さんは家族が見守れる時間には普段通り、2匹を同じ部屋で過ごさせることに。

すると、ライムくんは少しずつ元気になり、エリザベスカラーを気にせず、シンバくんにプロレスを仕掛けるようになっていった。

片目になると、距離感が掴みにくくなるのでは…と思っていましたが、高い場所にもジャンプでき、術前と変わらない生活を送っています。

術後1年間は定期検査で目や内臓の状態、ガン細胞の転移などを調べてもらったが、早期治療が功を奏したのか、ライムくんの体調は安定。現在は通院をしなくてもよくなり、元気に毎日を楽しんでいる。

愛猫の闘病を経て、飼い主さんが学んだのは「虹彩メラノーシス」の段階で病院に相談することの大切だ。

虹彩メラノーシスや虹彩メラノーマは発症の原因が不明で予防法や治療法もなく、投薬などで進行を遅らせることもできないと知りました。年齢を重ねた子に発症しやすいそうですが、ライムのように若い年齢でも発症することがあります。

「虹彩メラノーシス」は必ずしも「虹彩メラノーマ」になるわけではない。だが、変化する場合は飼い主が驚くほど、進行速度が速いケースもある。

愛猫の目に茶色いシミを見つけた時は体調に変化がなくても、通院を先延ばしにしない――。ライムくんの体験に触れ、そんな約束を自分自身と交わしてほしい。